2011 Fiscal Year Research-status Report
セレノおよびテルロニトロシル錯体の合成法確立と性質の解明
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23550082
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
武藤 雄一郎 中央大学, 理工学部, 助教 (50453676)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | セレノニトロシル錯体 / テルロニトロシル錯体 / ニトリド錯体 / カルコゲン / モリブデン |
Research Abstract |
本年度は、6価ニトリドReカリックスアレーン錯体(Ph4P)[ReN{p-tBucalix[4]-(O)4}]と灰色セレンとの反応を検討した。6日の反応後、ベンゼンで抽出し、赤褐色の粉末を得た。この粉末のIRでは1164cm-1にNSeに帰属できる吸収を示し、1H-NMRでは芳香環メタ位に帰属できるシグナルが1種類、メチレンに帰属できる二重線を2種類、t-Bu基に帰属できる一重線を1種類観測されたことから、対称の錯体の生成が示唆された。最終的に構造は予備的ではあるがX線構造解析によって確認し、(PPh4)[Re(NSe)(OH){p-tBucalix[4]-(O)4}]であると決定した。本錯体は八面体構造を持ち、Re-O結合長(1.973(9) )は、単結合の範囲であることから、NSe配位子のトランス位はヒドロキソ(OH)配位子であると決定した。これに対応して、単結晶のIR(3423 cm-1)および1H-NMR(10.37 ppm)でもOH配位子に帰属できるシグナルが観測される。NSe結合長(1.704(12) )は、Mayerらの錯体[TpOs(NSe)Cl2] におけるReN-Se結合長(1.629(10))より少し長いが、これはOH配位子のトランス影響のためである。Re-NSe結合長(1.766(11))は、類似のヒドロキソジアゼニド錯体(PPh4)[Re(NNPh)(OH){p-tBucalix[4]-(O)4}]のRe-N結合長(1.817(8))よりも短い。さらRe-N-Seの結合角(175.6(8)度)がほぼ180度であることから、本錯体におけるNSe配位子は、直線型であり、それに基づくと金属中心は形式16電子の3価のReと見なせる。NSe錯体は2例目となり、性質を明らかにするためには種々のNSe錯体を合成する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
世界で2例目となるNSe錯体の合成と構造解析に成功した点は評価できるが、種類が少ないため、NSe錯体の一般的な性質を明らかにするためには種々のNSe錯体を合成する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度使用したニトリド6価Re錯体は常磁性のため、反応をNMRで追跡することが困難であることから、反磁性のニトリド錯体を用いる。Chatt、Mayerらは6価のMoやOsのニトリド錯体からそれぞれ[MoNS(S2CNMe2)3、[TpOs(NSe)Cl2]を合成している。金属の形式酸化数は、反応前後で6価から2価へと4電子還元されている。このことから、高原子価のニトリド錯体を用いた方が反応に有利であると考えられる。そこで、NS錯体への変換が達成されているジチオカーバマート配位子を持つ6価のMo錯体[MoN(S2CNEt2)3]を機軸として、セレン、テルルとの反応を検討する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究では酸素および水分に敏感な有機金属化合物を取り扱うため、ガラス製シュレンク管(単価15,000円)を使用する必要があり、消耗品として購入する。その他のフラスコ等のガラス器具購入費用を合わせて、ガラス器具全体の購入費用は400,000円となる。 錯体合成用の貴金属塩類として無水塩化モリブデン(6,000円/50 g)や塩化ルテニウム(15,000円/5g)を購入予定である。本研究で使用する試薬は、補助配位子の合成原料となる有機および無機試薬、カルコゲン元素、NMR測定用の重溶媒等の購入費用と合わせて、試薬全体の購入費用を640,000円と見積もった。これに23年度からの繰越分(193,489円)を合わせて使用する。有機金属化合物の合成には高度に脱水された溶媒と不活性ガス(アルゴンもしくは窒素ガス)が必須であり、本研究では、それぞれ140,000円、40,000円と見積もった。 研究代表者と連携研究者が国内外の有機金属化学に関する学会、討論会等において本研究の成果を発表すると同時に最新の動向を調査する予定である。そのための旅費を250,000円と見積もった。 以上はすべて本研究に従事する研究代表者、連携研究者ならびに研究協力者が、本研究に直接関係する目的で使用する費用であり、妥当な経費と考える。また、これらの経費は、本研究以外には補助申請がなされていないものであり、必要な経費である。
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Research Products
(22 results)