2012 Fiscal Year Research-status Report
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23550084
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
和田 亨 立教大学, 理学部, 准教授 (30342637)
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Keywords | 水の酸化反応 / 触媒 / ルテニウム / 錯体 |
Research Abstract |
24年度は、ビス(ターピリジル)アントラセン(btpyan)を架橋配位子とする二核ルテニウム錯体に、ビピリジン(bpy)、フェナントロリン(phen)、アセチルアセトナト(acac)、ジブチルキノン(Bu2q)を導入した錯体を合成し、それらの化学的な水の酸化反応に対する触媒活性について検討を行った。Ce(IV)を酸化剤に用いて酸性水溶液中で反応を行ったところ、bpyおよびphen錯体は良好な触媒活性を示すことが分かったが、acacとBu2q錯体は触媒活性を示さなかった。既にBu2q錯体は電気化学的な水の酸化酸化反応に対して高い触媒活性を示すことが明らかとなっているので、非常に強い酸化剤であるCe(IV)により触媒が分解している事が考えられる。そこで、Bu2q錯体とCe(IV)との量論反応を吸収スペクトルで追跡したところ、Ru(III)(Bu2q)までは安定に存在するが、それ以上の酸化が進行すると錯体の分解が確認された。触媒に導入した二座配位子は、触媒の安定性に影響していることが明らかとなった。このことから、酸化剤の種類を含め、反応条件を見直す必要があると考えられる。 また、btpyanにリン酸エステル基を導入した架橋配位子(btpynCH2PO3Et2)の合成、さらにはこの配位子を用いた二核ルテニウム錯体の合成に成功した。今後はリン酸基の脱保護とITO電極への化学修飾を行っていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、数種類の二座配位子を有する二核ルテニウム錯体の合成に成功し、その酸化還元挙動を明らかにしている。化学的な水の酸化反応において二座配位子は錯体触媒のターンオーバー数に大きく影響し、ポリピリジル配位子(bpyやphen)を導入した錯体は安定であり高い触媒ターンオーバー数を示すことが分かった。しかし、電気化学的な水の酸化反応においては、ポリピリジル錯体は比較的高い電位を必要とした。本研究の目的である「出来るだけ負側の電位で体触媒活性を示す触媒を開発する」を達成するためにはポリピリジル配位子上の置換基効果を検討する必要があると考えられる。研究計画では24年度中に、最適な二座配位子を選定する予定であったが、そこまでは到達していないものの重要な知見は得られている。 また、1,8-ジクロロアントラキノンを出発物質とし8段階の反応を経て、アントラセン骨格の10-位にリン酸エステル基を有する架橋配位子btpyanCH2PO3Et2を合成した。さらに、この配位子を用いて二核ルテニウム錯体の合成に成功した。今後、合成した錯体のリン酸エステルを脱保護をおこなうことにより、酸化チタンなどの表面上に錯体触媒を化学結合することが可能となる。半導体触媒と錯体触媒のハイブリッド型電極触媒を形成する前段階まで到達できたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度までの結果を踏まえ、25年度は以下の研究を計画している。 まず、24年度から引き続き二核ルテニウム錯体に導入する二座配位子の検討を行う。特にbpy配位子上に電子供与性置換基(Me,OMe等)を導入した錯体を合成し、その触媒活性について検討を行う。さらに、これまでに検討してこなかったホスフィン二座配位子(1,2-ビス(ジメチルホスフィノ)エタンなど)についても検討して行く予定である。これらの検討結果から水の酸化反応に最も適した錯体触媒を開発する。 同時に、リン酸基を有する二核ルテニウム錯体の合成、およびこれを用いた錯体修飾半導体触媒の開発を行う。24年度にリン酸エステル基を結合した二核ルテニウム錯体を合成したので、まずリン酸エステル基の脱保護を行う。そして錯体触媒をITO表面に化学結合した電極を用いてサイクリック・ボルタンメトリーの測定を行い、修飾電極の酸化還元挙動を明らかにする。最終的にはアノードに錯体触媒修飾電極、カソードに白金電極を用いて、光化学的な水の完全分解反応を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究計画の最終年度であるため、大型装置の購入は計画していない。主に錯体合成に必要な試薬類を購入する予定である。酸素定量用のプローブは使用するごとに徐々に劣化するため、新たに購入する予定である。また、最終年度に当たり学会発表に必要な旅費、論文投稿代等を計上する。
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