2012 Fiscal Year Research-status Report
単一くし形微小電極を組み込んだ高感度マイクロ電気化学検出システムの構築とその応用
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23550087
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
石田 晃彦 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20312382)
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Keywords | 電気化学検出 / くし形電極 / 微小電極 / チップ分析 / マイクロ流体 |
Research Abstract |
直方体の流路とその底面に配置した電極からなるチャンネルフローセルにおいて,流体の線速度は感度の向上因子の一つであり,線速度は流量が同じ場合でも流路の幅および高さによって異なる。そのため適切な流路設計により感度向上が期待できる。そこで本年度の目的は,電流値とシグナル-ノイズ比(S/N 比)を向上させる流路の設計指針を得ることである。さらに,これに前年度に得た電極形状の設計指針を加えることにより電極と流路の最適デザインを決定することも目的とした。 線流速は,流路の断面を縮小するほど大きくなるが,それにつれて流体の圧力が大きくなる。本研究で構築するフローセルは,流路素材(PDMS)の粘着性によって流路と基板が可逆的に接合しているため,圧力が過大になると流路と基板の剥離が発生する。電気化学検出では酸化生成物が電極に吸着し,その除去に電極の研磨を必要とするため可逆的な接合は不可欠である。そこで,剥離が起きない流路サイズを明らかにするとともに流体力学的見地から剥離が起きない幅と高さの下限値をそれぞれの関数として得た。つづいて,剥離が起きない領域で,流路の幅と高さそれぞれの電流値およびS/N比への効果を明らかにした。実験結果はいずれも理論的に想定される挙動と一致した。以上から,流路のサイズについて,剥離強度と感度の両面について理論的な設計指針を得た。 以上の検討に基づいて電極形状および流路の最適デザインを決定し,フローセルをを構築した。次に,フェロシアン化カリウムなどをモデル物質に用いて検量線を作成することでフローセル単独の性能(検出限界)を評価した。その結果,サブμMオーダーだった検出限界がnMオーダーまで向上し,実用的な感度が得られることを確認した。また,従来高感度な検出器とされるウォールジェト式フローセルとの比較も行い,本フローセルがそれを超える感度を持ちうることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当年度の目標は,流路の設計指針を確立するとともに前年度の成果にももとづいてフローセルを構築し,その性能を評価することにある。上述したようにこれらの目標は計画通り達成されたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,本年度構築したフローセルをマイクロHPLCシステムに搭載し,カテコールアミン,カテキン,フェノール類の各混合物をこのデバイスで分離・検出し,検出性能,再現性,耐久性,ピーク分解能を評価する。さらに,この結果をもとに電極形状および流路の改良を行い,将来の実用化を前提としたフローセルの完成を目指す。 また,流路内の電極上の濃度分布を数値シミュレーションすることにより,電極幅,物質の拡散係数,流速,流路高さなどのパラメーターが感度に対しどのように寄与するかを理論的に明らかにする。この検討を通して,分析対象,分析条件,用いるカラムの仕様などに応じてくし形電極や流路を設計するための指針を確立する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は,主に,フローセルデバイスの材料(電極材料,フォトリソグラフィー用試薬),性能評価に用いる試薬,一般実験器具などの消耗品費に使用する。さらに,数値シミュレーションを行うための計算機使用料および本研究にかかわる情報交換や研究成果発表のための旅費として使用する予定である。
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Research Products
(4 results)