2012 Fiscal Year Research-status Report
5位で連結したビスキノリノール誘導体の錯形成能と分光特性
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23550090
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
金 幸夫 茨城大学, 理学部, 教授 (40186367)
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Keywords | キノリノール / キレート試薬 / 金属錯体 / 溶媒抽出 / 希土類 |
Research Abstract |
本研究は、5位で連結したビス-8-キノリノール誘導体を新規合成し、それらの錯形成能および分光特性を明らかにし、新規分析試薬としての有用性を示すことを目的とする。そのため、(1) 新規ビスキノリノール誘導体の合成、(2) それらの基本特性、(3) 金属イオンとの錯形成能評価、および(4) 抽出試薬特性評価の4課題を設定し研究を進める。 平成23年度に誘導体の合成法を確立したので、24年度は、誘導体の酸解離特性(2)および、錯形成能の評価を行った(3)。 (2)については、酸解離平衡定数を決定した。ビス体ではそれぞれのユニットで2つ、計4つの酸解離平衡プロセスが考えられるが、2つのpKaのみが観測された。これは、昨年得られたNMRの結果と同様に、キノリノールユニット自体はモノ体と同様な特性を有することを示す。 錯形成能(3)については、4配位(Pd, Pt)、6配位(Al)、および8-10配位(Ln)について検討した。4配位についてはM対Lが1対1である錯体の形成とともに、ビス体のひとつのキノリノールユニットが配位しない1対2錯体の形成が確認された。Alとは1対2錯体が主であるが、1つのビス体を架橋配位子とする2対3錯体の形成が確認できた。これらの結果はビス体は、モノ体の配位特性を失わず種々の金属イオンと錯形成できること、及び架橋配位子としての可能性を示す。Lnの錯形成では、金属の溶媒抽出で有用な酸性条件下で検討した。酸性条件下では芳香環Nへのプロトン付加によりモノ体は錯形成できない。これに対して、ビス体はpKaがモノ体と同様であるにもかかわらず錯形成することが確認できた。これはビス化によるキレート効果の増大によるものと考えられる。 以上、研究実施計画に沿い順調に推移し、25年度予定である溶媒抽出への応用(4)に移行できる結果を得たと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題1については、当初計画の3種類のビスキノリノール誘導体の合成法を確立した。課題2については、ビス体の吸収およびNMRスペクトル、酸解離定数を決定し、それら基本特性をモノ体と比較した。課題3については、ビス体の錯形成能が、キレート効果の増大により、キノリノールユニット自体の特性はモノ体と変わらないものの錯形成能が高くなる結果を得た。これらより、次年度計画の溶媒抽出への応用を進める準備が整った。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度、錯形成が認められたAl、Pd、Pt、およびランタノイドとの錯形成について、吸収スペクトルおよびMSによる生成定数の決定を行うとともに、単離・結晶化を構造を決定する。さらに、ランタノイドについて溶媒抽出への応用を行い、抽出率の向上を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初予定していた吸光光度計、蛍光光度計等のランプ交換を別予算にて手当てしたので、本年度予算は、抽出実験に備えるためのビス体の大量合成のための試薬類、溶媒類など物品費に充当する。
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