2012 Fiscal Year Research-status Report
溶媒抽出試薬担持型機能性分離材の3価陽イオンの分離回収能向上機構の解明
Project/Area Number |
23550091
|
Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
國仙 久雄 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (10251571)
|
Keywords | 機能性分離材 / Ga / In / 分離能 |
Research Abstract |
負2価6座配位子であるH2bbpenのフェニル基の5位に置換基として塩素が結合したH2Clbbpenを合成した。これを、シリカゲル表面にオクタデシル基を導入した担体に吸着担持し、新規機能性分離材を合成した。この分離材は13族元素を酸性領域で選択的に捕集することが可能で、同様の試薬を用いた溶媒抽出系に比べてGaとInの相互分離能が高い。本年は、シリカゲル表面に導入するアルキル鎖の炭素数の変化と、GaとInの捕集能および相互分離能との関係を詳細に検討した。その結果いくつかの興味深い結果が得られた。 ①表面修飾する炭素数と捕集能の変化に関しては、炭素数が18および12ではほとんど違いが見られなかったが、炭素数が8の場合は18や12の場合と比較して、捕集能が大きく減少した。これは、炭素数の違いによって、表面の疑似有機相の領域が減少すると考えられ、その減少に伴い、吸着可能な容量も減少するためと考えられる。 ②表面修飾する炭素数が12以下の場合、担体であるシリカゲル表面上のシラノール基が金属の捕集に関与していることが、平衡解析の結果示唆された。炭素数12以下であれば、吸着した金属錯体とシリカゲル表面との距離が近いことから、シラノール基とイオン交換反応が起こっていると考えた。その結果、炭素数12の分離材では捕集率は炭素数18のそれに比べて、pHの増加に伴う捕集率の増加量が著しく大きいことがわかり、分離能が飛躍的に増加することがわかった。 これらの結果から、GaとInの相互分離のためにはシリカゲル表面に炭素数12のアルキル鎖を修飾し、配位子を吸着担持させた機能性分離材を使用すると良いことがわかり、分離能向上効果の一因としてシリカゲル表面のシラノールの寄与が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本申請では、シリカゲル表面をアルキル鎖で修飾した担体に負2価6座配位子のH2Clbbpenを吸着担持した分離材が、溶媒抽出と比較して相互分離能が良い要因の解明であった。本年度は、その一因として、シリカゲル表面のシラノール基の寄与を明らかにすることができた。このため、申請当初の目的の一部を達成したと考えられるので、おおむね順調に進展していると評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、共存陰イオンの影響を詳細に検討する。24年度には対陰イオンとして過塩素酸を用いた系で検討を行っている。溶媒抽出系の実験では、Gaを抽出する際に対陰イオンの影響が示唆されており、本機能性分離材を用いた捕集の際も同様に対陰イオンの効果が見られると考えられる。このため、対陰イオンを変化させ、相互分離能と対陰イオンの関係を詳細に検討し、選択性向上効果の要因の解明を目指す。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は物品の購入予定は無い。消耗品として分離材合成用試薬と金属イオン測定用アルゴンガスの購入を行う。秋に成果を学会で発表予定のため、旅費を計上する。
|