2012 Fiscal Year Research-status Report
真空蒸着によるアルミニウム薄膜の形態制御技術の開発と各種機能素子への応用
Project/Area Number |
23550100
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
肥後 盛秀 鹿児島大学, 理工学研究科, 教授 (10128077)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉留 俊史 鹿児島大学, 理工学研究科, 准教授 (60253910)
満塩 勝 鹿児島大学, 理工学研究科, 助教 (70372802)
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Keywords | 蒸着アルミニウム薄膜 / 表面形態 / 走査型電子顕微鏡 / 交流インピーダンス法 / 電解コンデンサー / X線光電子分光法 / 表面プラズモン共鳴センサー / エタノール添加ガソリン |
Research Abstract |
本研究では真空蒸着法を用いて,基板から孤立し直立した円柱状の微細構造であり,大きな表面積を持つアルミニウム薄膜を作製する技術を開発する。応用研究として,電解コンデンサーや触媒などの機能素子のモデルを作製し,電子産業や化学工業における新規金属薄膜材料の作製方法として貢献する。またアルミニウム薄膜における表面プラズモン共鳴(SPR)現象を用いる新しい屈折率センサーを作製し,分析化学における新規化学計測法の開発にも貢献する。 アルミニウム,金,銀,銅,鉄,ステンレス,ニッケル,チタン,モリブデン,タングステン基板上に,室温,400,500℃においてアルミニウム薄膜を作製し,走査型電子顕微鏡(SEM)を用いてその表面を観察した結果,室温では平坦であるが,高温では基板金属により固有の表面形態を持つことが分かった。500℃付近のアルミニウム基板において,目的とする孤立し直立した直径約1μmの粒子形態の薄膜を作製することができた。 交流インピーダンス法(EIS)を用いて,硫酸ナトリウム水溶液中の電気二重層の容量を測定し,平坦なアルミニウム薄膜と比較することにより,粒子形態のアルミニウム薄膜の表面積を求めたところ,460~520℃,膜厚75~300 nmにおいて,平坦なアルミニウム薄膜の約2.7倍になることが分かった。X線光電子分光法(XPS)を用いて測定したアルミニウム薄膜表面に存在する2~4 nmの酸化物のアルミナの表面層については,表面積測定には無関係であった。 ガラス棒の表面にアルミニウムを15 nm蒸着し,光源に発光ダイオード(LED),検出器にフォトダイオード(PD)を用いて,液体試料の屈折率変化に応答するSPRセンサーシステムを作製し,ガソリン中のエタノールの濃度センサーとしての利用に関する実験を行い,0~10%(E10)のエタノール濃度における良好な応答を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各種金属基板上に,室温,400,500℃においてアルミニウムを真空蒸着することにより,金属基板に特徴的な表面形態を持つアルミニウム薄膜が得られることを明らかにした。アルミニウム基板において,460~520℃,膜厚75~300 nmで目的とする表面積の大きな孤立し直立した直径約1μmの粒子形態の薄膜を作製することができた。交流インピーダンス法(EIS)を用いて,上記の蒸着条件において表面積の増加率約2.7倍が得られることを確認した。X線光電子分光法(XPS)を用いて測定したアルミニウム薄膜表面に存在する2~4 nmの酸化物のアルミナについては,表面積測定には無関係であり,正しい測定がなされていることが分かった。これらの研究成果については,第72回分析化学討論会と日本分析化学会第61年会において発表した。 アルミニウム薄膜を用いるガラス棒SPRセンサーの応答特性を,金や銀薄膜を用いる同センサーと比較することによって,紫外から赤外までの広い波長範囲の光に応答するなどのアルミニウム薄膜のSPRセンサーとしての特徴を明確にした。この新規センサーの工業的な利用について,ガソリン中のエタノールの0~10%(E10)の濃度測定が可能なことを実証した。これらの研究成果についても,上記の学会に加えて,第30回九州分析化学若手の会夏期セミナーと鹿児島大学・産総研関西センター研究シーズ連携発表会において発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
アルミニウム基板において,460~520℃,膜厚75~300 nmで目的とする表面積の大きな孤立し直立した直径約1μmの粒子形態の薄膜を作製することができたが,その走査型電子顕微鏡(SEM)写真の画像イメージの解析により,粒径分布と表面積を計算して,交流インピーダンス法(EIS)を用いて測定した表面積の増加率との比較検討を行い,孤立し直立したアルミニウム薄膜表面の微細構造に関する知見を得る。 エタノール添加ガソリン中のエタノール分析のためのアルミニウム蒸着ガラス棒SPRセンサーのアルミニウム薄膜の膜厚や光源の波長などのセンサーの条件を検討して,最適条件を決定する。またこのセンサーの安定な長期繰り返し使用を可能にするためのアルミニウム薄膜の表面処理についても検討する。 波長掃引型のSPRセンサーシステムを用いて,金とアルミニウム薄膜における応答を測定し,ガラス棒SPRセンサーの応答との比較検討により,これらの金属薄膜の誘電率などの物理定数に関する研究を行い,SPRセンサーにおけるアルミニウムの特徴を明確にする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
真空蒸着装置の維持管理に必要な各種真空部品や電子部品と蒸着金属薄膜作製のための各種金属を購入する予定であったが,真空蒸着装置の性能は良好であり,高価な消耗部品の交換はなく,また蒸着金属についても既存のもので対応することができたため,未使用金が発生した。次年度の研究費に未使用金を加えて以下の費目に使用する。 アルミニウム薄膜表面の形態観察と状態分析のためにSEMとXPSの利用料金が必要である。アルミニウム薄膜ガラス棒SPRセンサー作製のための各種試薬や化学実験器具,また波長掃引型のSPRセンサーシステム作製のための光導波路測定用4光軸制御ユニットと各種電子部品を購入する。研究成果をAsianalysis XIIと日本分析化学会第62年会において発表するために旅費が必要である。研究補助とSEM画像やXPSスペクトル解析のための学生への謝金も計上した。最終的な研究成果を学術論文に出版するための経費も必要である。
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