2011 Fiscal Year Research-status Report
高速液体クロマトグラフ質量分析計用大気圧多光子イオン化法の開発と環境汚染物質計測
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23550102
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
八ツ橋 知幸 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70305613)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 非共鳴多光子イオン化 / 高速液体クロマトグラフ / 大気圧光イオン化 / 大気圧化学イオン化 / 四重極質量分析計 / ピコ秒レーザー / 多環芳香族化合物 / 環境汚染物質 |
Research Abstract |
1.高速液体クロマトグラフの分離条件の確立 H22年度に導入した高速液体クロマトグラフ質量分析計を用いて、標的とする多環芳香族化合物の分離条件の探索を行って最適な分析条件を確立した。また、大気圧多光子イオン化法実施に先立ち、大気圧化学イオン化による定量測定法のプロトコルを作成して定性・定量分析手法を確立した。また大気圧多光子イオン化法実施の際には大気圧化学イオン化の際のコロナ放電の電流値を0にすれば両手法が併用できることを確認した。2.大気圧多光子イオン化光学系の構築 小型ピコ秒レーザー(500 ps, 532 nm)による光イオン化光学系を構築した。ピコ秒レーザーのビーム径は100ミクロンと小さいため、集光強度を高めるためにはビーム径を拡大する必要があった。また、レーザーのエネルギーを調整し、さらに集光位置が操作可能である必要があった。そこでビーム径を20倍に拡大する無反射コート付きビームエクスパンダー、そしてエネルギー調整のための半波長板と偏光子からなる光学系、そしてイオン化室へビームを集光する集光光学系をそれぞれ構築し、第一の目的である「非共鳴多光子イオン化部の製作が既存の装置の最小限の改造で出来ることを示す」ことを達成した。当初は光ファイバーを用いた光学系を予定していたが、レンズで直接集光する光学系に変更しても自由度はそれほど変わらないこと、ファイバーを介すことでエネルギーが損失すること、ファイバーの劣化が懸念されたことから直接集光系に変更した。レンズを介した後のエネルギーは50μジュール、パルス幅は500ピコ秒であり、ビーム広がり角を0.275 mradとすると、最大47 GW/cm2のピーク強度が期待でき、本研究の目的である多光子イオン化が十分可能であることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的に挙げた「1.ピコ秒レーザーによるイオン化部の構築と最適条件の探索」のうち、構築については予定どうり完了した。ただし、当初「ピコ秒レーザーと光ファイバーを用いたイオン源の構築」を予定していたが、ファイバーの劣化によるエネルギーの損失が判明した事からレンズを用いた導光路に変更した。自由度は多少少なくなるが、得られたエネルギー、ビーム径、およびパルス幅から集光強度は実証実験には十分だと判断した。ただし、レーザーおよび光学系の導入がずれこんだため「イオン化最適条件の探索と感度測定」に関しては十分なデータが得られていない。高速液体クロマトグラフ質量分析計を新規に導入したので、大気圧多光子イオン化法実施に先立ってまず、大気圧化学イオン化による定量測定法のプロトコルを作成して定性・定量分析手法を確立した。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、「イオン化最適条件の探索と感度測定」を達成するため、シリンジポンプを用いて試料溶液を直接質量分析計に導入してレーザーの最適集光条件を探索する。イオン信号を連続して観測しながらレンズの位置やレーザーのエネルギーなどを微調整し、最適なイオン化条件を見いだす。高速液体クロマトグラフによる分離に関してはすでに多環芳香族化合物の最適な分離条件を見いだしてあるので、次に16種類の多環芳香族化合物について大気圧化学イオン化と大気圧多光子イオン化の感度を比較し、それぞれの検出限界を明らかにする。分子イオンそしてプロトン化されたイオンの比率を比較することで両手法のイオン化機構の詳細を明らかに出来ると考えている。さらに検出感度向上のため各種ドーパントを試料溶液に加えて検出限界の向上を試みる。レーザー照射条件およびドーパント条件の最適化の後に、各種化合物について網羅的な感度調査を行ってデータベース作成にとりかかる。当初計画にはなかったが、エレクトロスプレーイオン化にも多光子イオン化を併用することを計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
装置を定常的に運用するため、試薬および高速液体クロマトグラフ用の溶離液やガスフィルターなどの消耗品、窒素ガス発生装置のメンテナンス代金が必要である。また、長作動距離の対物レンズ、および対物レンズ用の位置決め用のピエゾアクチュエーターを導入して集光強度のさらなる増大を図り、イオン信号の増大と検出感度の向上を目指す予定である。
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Research Products
(11 results)