2012 Fiscal Year Research-status Report
神経伝達物質に近赤外領域で応答する金属錯体センサーの開発
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23550104
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
橋本 剛 上智大学, 理工学部, 助教 (20333049)
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Keywords | 分子認識 / 神経伝達物質 / 錯体化学 / 電気化学 / 近赤外光 / ルテニウム |
Research Abstract |
研究の目的は、「生体関連分子を認識して、近赤外領域で応答する金属錯体センサーを開発する」ことである。具体的には、ドーパミンなどのカテコールアミンを認識して、同一分子内同種金属の酸化数の違いにより発生する混合原子価状態に由来する近赤外光を吸収する二核ルテニウム錯体を合成し、その構造評価を行うことを目的としている。2年目である平成24年度は、1)アミノ基に対する親和性の高い分子認識部位導入、2)ルテニウム二核錯体の電解時における混合原子価状態に関する情報の再収集、3)分子認識部位と架橋配位子の結合方法に関する分子設計の検討、の3点を中心に行った。以下に結果を示す。 1)昨年度はアミノ基の認識部位としてクラウンエーテルを念頭に置いていたが、新たにコハク酸イミドカルボン酸エステル部位を導入することで、より確実にドーパミンのアミノ基を認識できることが分かった。特に蛍光部位を導入した包接化合物の評価では、これまでよりも感度が1000倍以上増加することが分かった。 2)混合原子価状態に関しては、ルテニウム二核錯体の電解EPRスペクトルおよび電解電子スペクトル(可視~近赤外)により、特にRuIII価-RuIV価の混合原子価状態が1電子酸化により得られ、その特徴的なシグナルを観測することに成功した。 3)応答感度向上のためには、分子認識部位と中心金属が同一平面上にあることが分子指針上有用である。この効果を厳密に評価するため、分子認識部位の置換位置のみが互いに異なる二種のルテニウム新規錯体の合成をスタートさせた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
分子認識部位の設計とドーパミンに対する選択性に関しては、ある程度期待通りの成果が得られている。分子認識部位と中心金属を結ぶ架橋配位子部分については、アゾカップリングによる配位部分の導入を行うこととしている。当初計画では、本年度中に分子認識部位を導入した錯体の評価を終えることになっていたが、実際にはビスフェノールの2か所にアゾ基を導入する合成およびその後の精製が困難であることが発覚し、架橋部分での分子設計をやり直す必要が生じてしまった。現時点では、別の骨格による対象二核錯体の分子設計を再度検討しているところである。また、近赤外の吸収帯の強度を上げる/可視部の吸収帯をより近赤外にシフトする分子設計に関してはいまだ不十分なところがある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度までの結果をフィードバックし、分子認識部を2箇所持つルテニウム二核錯体を合成する。分子認識により二核間相互作用に変化が起こるかを調べ、系の最適化を図る。最適化の具体的方法は以下の3点により行い、目的とする機能発現のための、分子認識設指針の確立を図る。 ①β-ジケトナト配位子の置換基の最適化による溶解性の向上、酸化還元電位の制御 ②分子認識部と架橋基とを結ぶアリール環への置換基導入、および分子認識部位の位置制御③分子認識に関する評価方法(測定条件)の再検討とその評価結果のまとめ
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の残額(次年度使用額)は46万円程度あるが、これらは研究の進捗に伴う通常の消耗品(試薬・ガラス器具)を中心として引き続き使用する予定である。これも含めた予算の残額は、薄層電解セルをはじめとするガラス器具類や、電気化学測定のための各種消耗品や装置のメンテナンス、化合物合成のための各種試薬(原料となる塩化ルテニウムや配位子材料の有機試薬)溶媒、カラム充てん剤等、消耗品を中心とした支出になる予定である。また国内学会(日本分析化学会年会、錯体化学会討論会)での成果発表および情報収集、実験補助者への謝金なども支出予定である。
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