2011 Fiscal Year Research-status Report
リチウムから炭素の軽元素の大気圧XAFS測定分析手法の開発
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23550107
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
石井 秀司 立命館大学, 総合理工学研究機構, チェアプロフェッサー (30251466)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | XAFS / X線 / 放射光 / 軽元素 / リチウム / 大気圧測定 |
Research Abstract |
本研究の目的は、これまで困難であったLi~CのK端XAFSを大気圧条件下で測定する新たな分析手法を開発することにある。このため、SiNx窓材によるサブミリのHeパスと試料バイアスによる転換電子収量法を併用した「試料ホルダー」型の大気圧XAFS測定セルを作成することを目指す。今年度は、放射光ビームの最適化、電圧印加での試料伝領測定テスト、軽元素等標準試料の標準XAFSスペクトル測定、大気圧XAFS測定セルの基礎設計を実施した。 放射光ビームサイズの最適化では、別途改造した後置鏡システムを調整し、ビームサイズと光強度の最適化を行った。これまでの20-30°傾いていた1.6mm(垂直)×0.6mm(水平)矩形状のビームスポットが1.6mm(垂直)×1.0mm(水平)の垂直な形状へ最適化した。出口ハルトマンスリットの幅と試料電流強度・ビーム形状の依存性から、光強度最大となる最適値を見出した。これにより、これまでの2.5-3倍の光強度のビームが、すべてSiNx窓を透過できるように最適化でき、検出信号強度の増大を達成した。一方、電圧印加試料電流測定のテストとして、低信号強度を想定した90%透過Auメッシュで乾電池で9-18Vの電圧印加測定をしたが、バックグラウンド強度が高く、シールド等さらなる検討が必要なことが分かった。 実際の対価付測定時の基準となるLiからF、遷移金属を含む標準試料の標準XAFSを測定し、データベース化した。特にLiと同じエネルギー帯の遷移金属M端のスペクトルにも化学状態依存性が明確にあることを見出した。 これらの結果を受けて、試料電流収量等でも対応可能で、かつ真空シールが確実となるように、メンブレンチップとO-ringが触れ合う方法から、チップを金属台座に真空シールで接着して台座をO-ringでシールする方式に変更し、それに伴った汎用型セルの基礎設計を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
真空シールの確実性を増すことや、多目的(汎用型)に使えるようにするために、大気圧XAFSセルの基礎設計、およびその検討に当初計画より相当時間を用いた。その一方で当初計画より確実性の高い基礎設計を行うことができた。 一方、測定の実証実験については各種調整実験の結果、入射ビームに関連する問題は解決できている。また電圧印加の問題に対しても試料電流でも測定可能なように大気圧XAFS測定セルを設計変更したために対応可能であることが分かった。 以上のように当該実験を行うための必要な検討はほぼできており、一部汎用測定向けのセルの設計など次年度分を専攻した部分もあるが、ただし、実際に大気圧XAFS測定セルを作って、テスト測定を実施するには至っていないため、今年度の達成度はやや遅れているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、今年度汎用測定に対応できるように基礎設計した大気圧XAFS測定セルを実際に作製して、実証実験を行っていくことに重点を置く。大家圧XAFS測定セルは施策を繰り返して制度を上げていくことを目指す。メンブレンチップの取り付け位置の再現性等については今年度変更した基礎設計ですでにかなり再現可能であるために、真空シール部部分を重点的に試作していくこととする。また同時にHe雰囲気下で再現性よく試料調製ができるスキームを確立する。 このように試作を繰り返した大気圧XAFS測定セルに対して、乾燥した標準試料や浸漬電極試料等の濡れた試料を用いて実証実験を行っていく。また同時に標準試料等では各種実験条件の最適化調整も行う予定である。これによりCより低エネルギーの濡れた試料でのデータ取得を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度実施予定の汎用型大気圧XAFS測定セルの機能まで先行して、基礎設計を行ったために汎用的な測定セルの設計まで至ったが、実際大気圧測定セルの試作するところまでは時間が足らずに達成できなかった。そのために次年度使用額918565円が生じている。このために、この研究費については、ほぼ全額を大気圧XAFS測定セルの試作とそれに関連した消耗品の購入に割り当てる予定である。 また本来の次年度計画分1200000円については、半額の600000円を、大気圧XAFS測定セルの試作および関連消耗品に使用予定で、残りは、200000円を標準試料・ガス等の証文品、100000円を旅費、200000円を放射光ビームライン利用のためのビームライン使用料、100000円を印刷費他、に使用する予定である。この使用計画により、次年度の研究方針は達成可能であると考えている。
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