2012 Fiscal Year Research-status Report
磁気分離を利用したバイオセンシング用実試料前処理法の開発
Project/Area Number |
23550109
|
Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
永谷 尚紀 岡山理科大学, 工学部, 准教授 (90351072)
|
Keywords | バイオセンサ / 磁性微粒子 / 磁気分離 / 電気化学測定 |
Research Abstract |
だ液中のストレスマーカーの一種である分泌型免疫グロブリンA(s-IgA)を磁性微粒子で分離し、分離バイオチップの諸条件の検討を行なった。プロテインAで被覆された磁性微粒子に抗s-IgAを抗体を標識した磁性微粒子で分離を行ない、イムノクロマト法、タンパク質濃度測定、電気化学測定にて分離の確認、検出を行なった。イムノクロマト法の金ナノ粒子の代用としてs-IgAを捕獲した磁性微粒子での検討を行なったが、金ナノ粒子の様な発色は見られなかった。磁性微粒子でs-IgAを分離後の溶液中のタンパク質濃度は、加えた磁性微粒の量に応じて減少するのをタンパク質濃度測定にて確認した。抗体と金ナノ粒子を用いた高感度の電気化学測定によって分離前後でs-IgAの濃度を測定したところ、同様に加えた磁性微粒子の量に応じて分離後のs-IgAが減少しているのを確認した。 5'末端にFITC(fluorescein isothiocyanate)、Biotinを標識したプライマーにてウイルス、細菌(インフルエンザウイルス、大腸菌、ウェルシュ菌)の増幅遺伝子を増幅し、ストレプトアビジンで被覆された磁性微粒によって増幅遺伝子の分離を行ない、イムノクロマト法、電気化学測定、蛍光測定によって分離バイオチップの諸条件の検討を行なった。インフルエンザ遺伝子では、磁性微粒子での分離前ではあるが、増幅遺伝子のイムノクロマト法での確認を行ないPCR用バイオチップを用いることで短時間で高感度に検出が可能であることを見いだした(Analyst, 2012, 137,3422-3426) 。増幅遺伝子の分離の確認は、イムノクロマト法、電気化学測定、蛍光測定によって確認を行なった。 これらの結果より分離バイオチップ作製のための諸条件が得られた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
24年度は測定対象を磁性微粒子にて分離することによる測定感度の影響の検討を目標として行った。計画書通りに測定対象をタンパク質の系、増幅遺伝子の系と二種類の検討を行った。 タンパク質の系では、測定対象の抗体を標識した磁性微粒子によって分離を行ない、イムノクロマト法、電気化学測定法、タンパク質濃度測定にて分離効率の測定を行った。増幅遺伝子の系では、イムノクロマト法、蛍光、電気化学測定にて分離効率の測定を行い、タンパク質の系と同様に分離効率の測定を行った。しかしながら、計画書で危惧していたようにイムノクロマト法では、磁性微粒子による測定対象の分離、磁性微粒子を発色素材とする検討は、イムノクロマト法で発色素材として使用される金ナノ粒子と異なり十分な効果が得られなかった。タンパク質の系では、電気化学測定、タンパク質濃度測定にて分離効率が得られた。 増幅遺伝子の系では、蛍光では測定感度の問題で分離前後で僅かな差しか見られなかったが、電気化学測定にて分離効率が得られた。これらの結果は、25年度に試作する測定対象分離バイオチップの基礎データとなる。また、磁性微粒子で分離する前の検出系での結果であるが、インフルエンザのウイルスをPCRチップで増幅し、イムノクロマト法で検出を行なった結果を専門誌に投稿したところ表紙として採用された(Analyst, 2012, 137,3422-3426)。また、同様の検出方法で大腸菌、ウェルシュ菌の高感度の検出も可能とした。 これらの結果より、研究は、おおむね順調に進展していると評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
23年度、24年度で得られたデータを基にして測定対象分離バイオチップの試作を行なう。測定対象分離バイオチップの流路内に磁性微粒子を磁力でトラップする部分を設け、磁性微粒子をトラップした後に測定対象となるタンパク質、遺伝子増副産物を分離するのが良いのか、測定対象と磁性微粒子を混ぜ合わせた後に測定対象分離バイオチップに送液して磁性微粒子を磁力で捕らえ分離するのが効率が良いのか検討を行なう。 測定対象の検出に関しては、タンパク質に関しては、磁性微粒子、金ナノ粒子の複合系の検出をイムノクロマト法、電気化学測定にて検討を行い、増幅遺伝子に関しては、イムノクロマト法、電気化学測定法に加え蛍光測定での検討を予定している。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は最終年度であり、今まで得られたデータを基にして測定対象分離バイオチップの試作に経費を充てると共に抗体、磁性微粒子、遺伝子増幅に使用する酵素、プライマー等の消耗品に使用する。また、最終年であり、秋季、春季の学会にて本研究の成果の発表を行うための交通費、データ整理等のアルバイトの人件費を予定している。
|