2012 Fiscal Year Research-status Report
0価ルテニウム錯体を用いた酸化的カップリング反応の開発とその選択性発現機構の解明
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23550117
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
平野 雅文 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70251585)
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Keywords | 酸化的カップリング / ルテニウム(0) / 共役ジエン / 置換アルケン / アレン / ケテン |
Research Abstract |
平成24年度の研究では、共役ジエンとアルケン類の化学量論的ならびに触媒的な交差二量化について研究を行った。共役ジエンとアクリル酸エステルなどの置換アルケンの反応では、両者が酸化的カップリングした後に水素移動が進行し、0価のルテニウム錯体が生成する。置換アルケンとして酢酸ビニルを用いた場合には、酸化的カップリングした段階でアセチル基のカルボニル酸素がルテニウムに配位し、メタラサイクルの段階で反応が停止した錯体が生成した。これは本反応が酸化的カップリング機構により進行している査証となる。この反応は、触媒的にも進行し、特にミルセンなどの多分岐型ポリエンを用いた場合にも、共役ジエン部分のみがほぼ定量的にアクリル酸エステルと反応した。 共役ジエンと置換オレフィンとの反応機構の詳細な検討により、これらの反応は、配位した共役ジエンに置換オレフィンが配位してから反応が開始されることが明らかとなった。また、この反応は基本的には立体障害を大きく受ける協奏反応であるが、配位した置換アルケンが配位している共役ジエンに求電子的攻撃をしていると考えられる位置選択性が見られた。 また、配位した共役ジエンはアレンやケテンなどのクムレン型化合物と反応し、化学量論的にビス(πアリル型)ルテニウム(II)錯体を与えた。特に1置換アレンを用いた場合には、2つの直交するπ平面上に合計4つのプロキラル面が存在するが、得られた生成物は単一のジアステレオマーであることから単一のプロキラル面と共役ジエンが選択的に反応していることが明らかとなった。共役ジエンとケテンの反応では両者がルテニウム上でカップリングした0価ルテニウム錯体を化学量論的に与えた。これらの触媒反応への応用は今後の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は当初の計画以上に進展している。具体的には共役ジエン間でのジアステレオ選択的な化学量論的カップリング反応とその機構解明、共役ジエンと共役カルボニル化合物の化学量論ならびに触媒的カップリング反応、共役カルボニル化合物間の触媒的カップリング反応、メタクリル酸メチルと置換アルケンのジアステレオ選択的な触媒的カップリング、1,3-ジエンと1,2-ジエン間のジアステレオ選択的カップリングや共役ジエンとケテンの量論的カップリング反応など、数多くの反応を開拓するとともに、分子レベルでの多くの知見を得てきた。また、これらの成果をもとに活発な論文発表と学会報告を行ってきた。 これらの研究の中で、置換アルケンどうしのジアステレオ選択的な触媒的鎖状交差二量化を世界ではじめて実現し、さらに世界初となる置換アルケン間の触媒的不斉鎖状交差二量化を実現した。これらの研究成果のうち、キラル化合物の構築を中心として、JST先導的物質変換領域への採択につながるなどの大きな進展が見られた。また、2013年には「触媒前駆体および不斉鎖状化合物の合成方法」と題する特許を出願した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、置換アルケン間の酸化的カップリング反応における支配因子と機構解明を中心に研究展開を行う。このため、共役ジエンと置換アルケン間の酸化的カップリング反応に加えて、共役カルボニル化合物と置換アルケン間の反応においても置換基の位置、電子的特性などが反応に与える影響を解明し、本反応の適用可能範囲を論理的に解明する。また、DFT計算により反応中間体と遷移状態に関する考察を行い、なぜ本系では報告例の少ない置換アルケン間での酸化的カップリングが選択的に進行するのか、との根源的な疑問を解明することを目的とする。 また、本反応はナフタレンの解離にともない発生する6電子反応場に共役化合物が4電子、置換アルケンなどが2電子で配位することにより基質選択的に反応が進行するが、置換アルケンがルテニウムに配位した中間体が低温で観測されるなど、置換アルケンは配位してから反応が進行することが裏付けられている。また、例えばブタジエンとプロピレンの反応では、プロピレンの2位でブタジエンの末端炭素と反応するなど、配位した置換アルケンが共役ジエンに対して求電子的攻撃をしている形跡も見出している。これらの酸化的カップリング反応の反応特性についてはDFT計算を用いた計算化学的な手法などにより解明を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H24年度には534,142円の予算が未執行であった。これは、当初計画が極めて順調に推移したためとH23年度にも未執行予算があったため、当初計画以下の予算で十分な成果を挙げる事ができたためである。 次年度の研究費は、主に置換アルケン、共役ジエン化合物をはじめとする試薬やベンゼン、トルエン、ジエチルエーテルなどの溶媒、ならびに乾燥窒素やアルゴンなどの不活性ガスなどの消耗品を中心に購入を行う。また、本研究の最終年度であることを考慮し、有機金属化学討論会、触媒討論会および錯体化学討論会などで積極的な成果発表を行うための旅費として使用する予定である。 本年度は最終年度であるので、適正に予算を執行し、当初計画を更に大きく上回る成果を挙げたい。
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[Presentation] Reaction of 1,3-Diene Complex of Ru(0) with Conjugated Cabonyls, 1,3-Dienes, and 1,2-Dienes: Straightforward Access to Unsaturated Carbonyl Compounds by a Ru(0) Compound2012
Author(s)
Masafumi Hirano, Yuki Hiroi, Nobuyuki Komine, and Sanshiro Komiya
Organizer
International Conference of Catalysis in Organic Synthesis
Place of Presentation
Moscow, Russia, Zelinsky Institute
Year and Date
20120915-20120920
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