2011 Fiscal Year Research-status Report
水溶性イリジウム触媒を用いアンモニア水を窒素源とする環境調和型有機合成反応の開発
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23550121
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤田 健一 京都大学, 地球環境学堂, 准教授 (80293843)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 良平 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 教授 (40115960)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | イリジウム触媒 / 水溶性触媒 / アンモニア / アミン / アルコール / 水素移動反応 / 脱水素化反応 |
Research Abstract |
本研究者はこれまでに、アンモニア分子を配位子として有する水に易溶なカチオン性Cp*イリジウム錯体触媒を合成し、アンモニア水とアルコール類とのN-アルキル化反応によるアミン合成触媒系を開発してきた。この成果を基盤とし、アンモニア水を窒素源として活用する広範で実用性の高い環境調和型有機合成反応系へと発展させるためには、さらに高活性な水溶性錯体触媒を開発することが課題となっている。 そこで本年度は、新規な高活性水溶性錯体触媒合成を目的として、機能性N,N-キレート配位子の導入、各種対アニオンの導入等について検討し、触媒活性への影響を調査した。その結果、機能性N,N-キレート配位子として6,6'-ジヒドロキシ-2,2'-ビピリジンを有するジカチオン性Cp*イリジウム錯体の合成に成功し、その構造を明らかにした。また、本新規錯体の触媒性能を調査し、N-アルキル化反応における素反応として重要なアルコールの脱水素的酸化反応に極めて高い触媒活性を発現することを明らかにした。 また、アンモニア水とジオール類との反応による含窒素複素環化合物の触媒的合成についても検討した。例えば、水溶性Cp*イリジウム錯体触媒の存在下、アンモニア水と1-フェニル-1,5-ペンタンジオールとの反応により、2-フェニルピペリジンを良好な収率で得ることに成功した。 さらに、アンモニア水とアルコール類とのN-アルキル化によって、合成化学的価値のより高い第一級アミンを合成する触媒系の開発にも取り組んだ。例えば、水溶性Cp*イリジウム錯体触媒の存在下、過剰量のアンモニア水とシクロヘキサノールとの反応により、第一級アミンのシクロヘキシルアミンをほぼ定量的に得られることを明らかにした。本触媒反応の適用範囲については、次年度も引き続き調査する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の実施計画であった、(1)新規高活性水溶性錯体触媒の合成、(2)アンモニア水とジオール類との反応による含窒素複素環合成については、当初の計画どおり順調に進展している。これらに加え、アンモニア水とアルコール類との反応による第一級アミン合成についても研究を進め、合成化学的価値のより高い第一級アミンを選択的に得る新規触媒系の構築に成功している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度以降も当初の研究実施計画にしたがって遂行していくが、特に下記の項目を重点的に検討する。(1)さらに高活性な水溶性錯体触媒の設計と合成、(2)アンモニア水とアルコール類との反応による第一級アミン合成、(3)反応実施後の触媒分離回収および再利用方法の確立、(4)アンモニア水を活用するニトリルやアミド合成の新規触媒系の開拓。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度は、従来から当研究室が所有していた試薬やガラス器具等を有効活用したため、物品費の執行額を抑えることができた。これにより生じた次年度使用額は、主として試薬、ガラス器具、ガスボンベ等の物品費(消耗品費)の購入に充てる予定である。また、平成24年度に交付を受ける経費については、当初の計画どおりに執行する予定である。
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