2011 Fiscal Year Research-status Report
水素自動移動プロセスに基づく革新的有機合成反応の開発
Project/Area Number |
23550122
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
鈴木 健之 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (10262924)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
周 大揚 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (00324848)
朝野 芳織 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (00311762)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 不斉合成 / イリジウム / 水素自動移動プロセス / 酸化反応 / 環境調和 / Tishchenko / メソジオール / タンデム |
Research Abstract |
本研究では水素移動反応と炭素-炭素結合生成反応の連携によるカスケード反応の開発を目指す。水素移動反応による酸化、還元、アルドール反応などの炭素-炭素結合生成反応は素反応として基本的かつ合成化学的に最重要な反応であり、それぞれの触媒サイクルをいかに制御しながら連携できるかが、本研究のポイントとなる。この技術は環境調和型反応として実用性にも優れ、キラルテクノロジーとしても魅力的である。すなわち、本研究により、数多くの不斉中心が一挙に構築されれば、触媒的不斉合成法の合成的有用性が大きく広がる。医薬品など有用化合物には多数の不斉中心を含むものも多く、本研究が目指す不斉合成法は将来の創薬研究に対しても有効な手法となる。このように、水素移動反応と炭素-炭素結合生成過程を含む不斉カスケード反応を開発できれば、学術的に興味がもたれるばかりでなく、合成化学的応用が広く期待できる。我々は既にキラルイリジウム錯体触媒を用いるジオールの非対称化反応を報告している。今回、本触媒を用いるメソ第二級ジオールと芳香族アルデヒドとの不斉タンデムカップリング反応を計画した。テトラヒドロナフタレンジオールとベンズアルデヒドのカップリング反応では最終工程で還元剤を添加するone-pot反応と添加しない水素自動移動反応について検討した結果、いずれの場合もカップリング体が98% eeの不斉収率で得られた。またインダンジオールとベンズアルデヒドのカップリング反応においても90%ee以上の高い不斉収率で反応が進行することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
キラルイリジウム錯体触媒を用いるメソ第二級ジオールと芳香族アルデヒドとの不斉タンデムカップリング反応を検討した。テトラヒドロナフタレンジオールとベンズアルデヒドのカップリング反応では最終工程で還元剤を添加するone-pot反応と添加しない水素自動移動反応について検討した結果、いずれの場合もカップリング体が98% eeの不斉収率で得られた。またインダンジオールとベンズアルデヒドのカップリング反応においても90%ee以上の高い不斉収率で反応が進行することを見出した。水素自動移動プロセスにおいては33%の化学収率にとどまったものの、one-pot反応では期待通り88%の化学収率で進行したため、おおむね順調に研究は進行しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
キラルイリジウム錯体触媒を用いるメソ第二級ジオールとアルデヒドとの不斉タンデムカップリング反応を更に進展すべく、芳香族アルデヒド以外のアルデヒドの検討をする。本反応を用い、天然物合成などへの応用にも展開する。one-pot反応では反応中間体の観測するなど、反応機構についての研究にも開始する。また不斉水素自動移動プロセスの更なる展開として分子内Tishchenko型反応の検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究の遂行に必要な大型化学研究設備は全て揃っているため、研究経費の大部分は消耗品に使用される。すなわち光学活性配位子およびその合成原料、金属錯体などの薬品類、反応および分析に必要なガラス器具、各種溶媒類に使われる。その他、成果発表、研究打ち合わせのための旅費、論文投稿に掛かる経費が使用される。
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