2011 Fiscal Year Research-status Report
サイト選択的金属担持メソポーラス型チタニア光触媒による水素生成システムの開発
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23550126
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
堤 健 宮崎大学, 工学部, 助教 (00304163)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 酸化チタン / 水素生成 / メソポーラス材料 / 金属担持触媒 |
Research Abstract |
TiO2光触媒では光励起電荷分離状態の長寿命化のために、助触媒としてPtなどの金属が担持される。しかし触媒表面の担持金属は、光遮蔽のデメリットを引き起こす。そこでメソポーラス型触媒の細孔内に金属をサイト選択的に担持させれば、金属による吸光度低下を抑えることができると考えた。本研究では長鎖メチレン配位子を有する白金錯体を合成し、これと界面活性剤を混合組織化して得られる液晶鋳型を用いて、サイト選択的Pt担持メソポーラスTiO2触媒を開発することを目的としている。 新規長鎖メチレン白金錯体の合成を検討した結果、1-ドデカンチオールとPtCl2との反応により、(C12H25SH)PtCl2錯体が定量的に生成することを見出した。そこで、合成した長鎖メチレン白金錯体(C12H25SH)PtCl2と界面活性剤であるドデシルアミンを、1-プロパノール中、混合し、白金錯体-界面活性剤複合液晶を形成させた。これを鋳型として、Ti(OiPr)4を用いたゾル-ゲル反応、焼成を経て、Pt担持メソポーラスTiO2触媒を得た。 得られた触媒の反応性について、光触媒的水素生成反応により評価したところ、Pt担持量が0.6wt%の場合、本方法で合成した触媒の方が従来法で合成したものよりも高い水素生成量を示した。これは、想定通りPtがサイト選択的に細孔内に担持されたことに起因すると考えられ、本年度の目的を達成できたと言える。以上の結果は、汎用性の高いTiO2触媒の高活性化を実現したことから意義深い。さらに本成果は、TiO2触媒のみならず様々なメソポーラス型金属酸化物においても応用可能であり、触媒合成法として重要性が高いことから、"部位選択的に助触媒金属が担持された多孔質金属酸化物の製造方法"として特許出願した。現在、触媒の最適合成条件について検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度研究計画に挙げた長鎖メチレン白金錯体の合成については、白金と錯形成させる長鎖メチレン化合物について、1-ドデカンチオール、ドデカンニトリル、1-オクチルピロリジン-2-オンなどを検討した。結果、1-ドデカンチオールが白金との錯形成に最も有用であることを見出し、目的である中性長鎖メチレン白金錯体の生成についてもNMR分析により確認した。チオール誘導体は遷移金属への配位力が高いことから、他の遷移金属(パラジウム、ルテニウム、ニッケル、ロジウム)についても、1-ドデカンチオールが対応する錯体形成に有効であると考えられる。カチオン性錯体、アニオン性錯体については、現在合成法について検討中である。 得られた長鎖メチレン白金錯体と界面活性剤を組み合わせた白金錯体-界面活性剤複合液晶を鋳型に用いて合成したPt担持メソポーラスTiO2触媒は、既知法で合成した触媒よりも高い水素生成活性を示すことを見出した。従って、研究計画に掲げたサイト選択的白金担持メソポーラス型チタニア光触媒の合成法の開発に成功したと言える。本成果については論文発表に先んじて特許出願、学会発表を行った。 多孔質金属材料は、チタニア触媒のみならず、SiO2, Fe2O3, WO3, ZrO2など様々なものが知られている。今回見出したメソポーラスTiO2触媒にサイト選択的に白金を担持する方法は、理論的には他の多孔質材料への応用が可能である。従って、本手法の汎用性、適応範囲の拡張のために、多様な金属錯体の合成および触媒合成条件の検討を行い、本手法の完成度を高める必要があるが、本研究課題の根幹であるサイト選択的金属担持メソポーラス型チタニア光触媒の開発には成功しており、概ね目的は達成できたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までにサイト選択的白金担持メソポーラス型チタニア光触媒の開発に成功した。さらに水素生成触媒活性を高めるために、触媒合成に用いる長鎖メチレン白金錯体、界面活性剤、チタンアルコキシド試薬の量比や濃度、反応温度などの反応条件を検討し、触媒合成の最適化を図る。 本研究では、光触媒的水素生成反応の犠牲剤として、バイオマス資源の利用を想定している。しかし、バイオマス資源はメタノールなどの第一級アルコール類と比べ酸化されにくいため、犠牲剤としての反応性は低下する。そこで、水素生成助触媒の白金に加え、酸化反応の助触媒として働く酸化ルテニウムを担持したサイト選択的白金/酸化ルテニウム担持メソポーラス型チタニア光触媒の合成を検討する。 得られた光触媒による水素生成反応において、犠牲剤バイオマス原料として、グルコース、キシロース、セロビオース、ヒドロキシプロピルセルロースなどを適用させる。還元助触媒である白金、酸化助触媒である酸化ルテニウムおよびメソポーラス型触媒の基質サイズ選択性を利用し、バイオマス原料を犠牲剤に用いた水素生成反応システムを構築する。 合成した光触媒を光反応用マイクロフローリアクターに組み込み、光触媒的水素生成反応を検討する。実用性を考慮しフローリアクターとして、ガス漏れがなく、UV領域の光まで透過するFEP(Fluorinated ethylenepropylene)チューブを用いることとする。犠牲剤としてメタノールあるいは水溶性バイオマス資源(グルコースなど)を用いる。マイクロフロー光反応システムは反応の高速化とともに、低出力なブラックライトでも光反応が可能であることが見出されている。そこで光源をキセノン、超高圧水銀ランプから、ブラックライト、LEDランプに代え、反応エネルギーの効率化を図る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品費については、薬品類として、Ti(OiPr)4など光触媒の主要構成原料、セチルジメチルアンモニウムクロライド、ドデシルアミンなどの鋳型合成用界面活性剤を購入する。また、塩化白金、塩化パラジウム、塩化ルテニウムなどの担持用遷移金属試薬を担持用金属試薬原料として必要となる。グルコース、キシロース、セロビオース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのバイオマス資源関連試薬、触媒合成用溶媒、液体クロマトグラフィー専用溶媒、NMR用重溶媒の購入に充てる予定である。 ガラス器具類として触媒の合成に必要なフラスコ、ビーカー、試験管、各種シリンジ、カラム、反応用チューブ類などのガラス製器具を購入する。また、閉鎖循環式光反応装置用の各種特殊ガラス器具が必要となる。 旅費については、触媒化学討論会(九州大学)に参加し、成果発表、情報収集するための必要な経費であるに計上する。 その他、国際雑誌に論文を投稿する際に、論文校閲を依頼するために研究費を使用する予定である。
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Research Products
(2 results)