2012 Fiscal Year Research-status Report
サイト選択的金属担持メソポーラス型チタニア光触媒による水素生成システムの開発
Project/Area Number |
23550126
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
堤 健 宮崎大学, 工学部, 助教 (00304163)
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Keywords | 光触媒 / チタニア / 水素生成 / バイオリファイナリー / メソポーラス材料 / 金属担持触媒 |
Research Abstract |
水素生成用チタニア光触媒に最適な金属である白金をターゲットとし、担持用白金化合物の合成を検討した。1-ドデカンチオールとPtCl2との反応により得られる(C12H25SH)PtCl2錯体を担持金属試薬として合成した。ゾルゲル反応によるメソポーラスチタニア触媒合成過程で、(C12H25SH)PtCl2錯体を使用することで、白金担持メソポーラスチタニア触媒を得た。チタン源であるチタンイソプロポキシド、(C12H25SH)PtCl2錯体、界面活性剤であるドデシルアミン塩酸塩の量比や反応条件を精査した結果、本研究で合成した白金担持メソポーラスチタニア触媒において、既報の方法で合成した触媒と比べ、およそ7倍の水素生成活性を発現させることができた。各種分析結果から、本触媒の高い水素生成活性は、白金が細孔内に担持されていることに起因することが予測された。 光触媒を利用したバイオリファイナリーにおいては、バイオマス資源であるフルクトースの5-ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)への変換反応および、ソルビトールのグルコース糖化反応に、半導体光触媒が有効であることを明らかにした。特にシリコンを用いた場合、バイオリファイナリーで問題となっている2次反応抑制に効果的であることを見出した。さらに、新たに有機酸を光触媒に固定した有機-無機ハイブリッド型ブレンステッド酸修飾光触媒の合成に成功した。 水素生成-バイオリファイナリー用光触媒として、多孔質型シリコンカーバイドの新合成法を開発した。本方法では、シリコンカーバイド前駆体として、シリレン-アセチレンポリマーを使用しており、従来よりも低温でのシリコンカーバイド化が可能である。従って、本方法では、結晶構造がβ型となることが明らかとなった。また、比表面積は、市販品のβ-SiCのものと比べ、約7倍となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
チタニア触媒の水素生成活性を高めるために、触媒合成に用いる長鎖メチレン白金錯体、界面活性剤、チタンアルコキシド試薬の量比や濃度、反応温度などの反応条件を検討し、触媒合成の最適化を行った結果、対応する既知触媒と比べ、約7倍の水素生成を実現した。これは、白金がメソポーラス細孔内にサイト選択的に担持できたことに起因することを各種分析データより明らかにした。以上の成果は、本研究の「サイト選択的金属担持メソポーラスチタニア光触媒による水素生成システムの開発」の根幹であり、研究目標達成に大きく前進したと判断できる。 バイオリファイナリーへの展開については、フルクトースのHMFへの変換反応、ソルビトールのグルコース糖化反応において、光触媒が有効であることを見出した。特にHMFは、医薬品、機能性材料、ポリマーなどの原料となることから、バイオマス由来合成物として注目度が高い。可視光応答型光触媒を利用できることから、太陽光を光源にすることで、バイオリファイナリー工程の環境調和、省エネルギー化にもつながる。以上のバイオリファイナリー用光触媒を新たに開発し、“ブレンステッド酸修飾光触媒” して特許出願した。 多孔質シリコンカーバイド光触媒の新規合成法を開発した。合成したシリコンカーバイドはβ型であり可視光応答性である。また、多孔質であることから、比表面積が市販のシリコンカーバイドと比べても大きく、水素生成およびバイオリファイナリーへの応用に優位である。以上の成果は、“シリコンカーバイドの製造方法” して特許出願した。 以上のように、23年度は、サイト選択的金属担持メソポーラスチタニア光触媒と光触媒のバイオリファイナリーへの展開に加え、新規光触媒を開発し、特許出願を行えたことから、概ね目的は達成できたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、サイト選択的白金担持メソポーラスチタニア触媒の合成法を開発し、対応する既知触媒と比べ、約7倍の水素生成活性を示すことを見出した。さらに、本触媒の機能を高めるために、酸化反応の助触媒金属の担持方法について検討を行う。酸化反応助触媒として、高い酸化触媒活性が報告されているルテニウム、金をターゲットとする。白金に加え、ルテニウム、金をサイト選択的に担持させた2元系チタニア触媒を合成する。水素生成および酸化反応の助触媒をチタニアにサイト選択的に担持できれば、バイオマス資源を水素生成反応の犠牲剤として利用できる。また合成した2元系チタニア触媒による水素生成反応の犠牲剤に、グルコースを用いる。この反応系でグルコースは酸化されグルコン酸が生成するが、グルコン酸は、医薬品や食物添加物など多様に利用されている。そこで、反応を制御することで水素とグルコン酸を同時生成する新たな光触媒反応システムを開発する。 本研究において、バイオリファイナリーの素反応に光触媒が適用できることを見出した。さらにバイオリファイナリー素反応である加水分解、脱水、酸化、還元反応の効率化を目指し、ブレンステッド酸修飾ハイブリッド型光触媒、多孔質シリコンカーバイドの合成及び適用条件を精査する。特に、正反応を促進し、2次反応を抑制する光触媒の反応エネルギー供与法を確立し、高選択的HMF合成の実現を目指す。 以上の光触媒反応の効率化、反応進行度を制御するため、合成した光触媒をフローリアクターに組み入れたフロー型光触媒反応システムを開発する。フローリアクターとして、ガス漏れがなく、UV領域の光まで透過するFEPチューブを用いることとする。光量、反応温度、フロー速度を精査し、水素生成およびバイオリファイナリーを対象としたフロー型光触媒反応法を確立する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品費については、薬品類として、チタンイソプロポキシド、シリコン、シリコンカーバイド、置換クロロシラン、など光触媒の主要構成原料、セチルジメチルアンモニウムクロライド、ドデシルアミンなどの鋳型合成用界面活性剤を購入する。また、塩化白金、塩化ルテニウム、塩化金酸およびナノ金属分散液(ルテニウム、金)などが担持用金属試薬原料として必要となる。グルコース、キシロース、セロビオース、ヒドロキシプロピルセルロース、キシランなどのバイオマス資源関連試薬、触媒合成用溶媒、液体クロマトグラフィー専用溶媒、NMR用重溶媒の購入に充てる予定である。 ガラス器具類として触媒の合成に必要なフラスコ、ビーカー、試験管、各種シリンジ、カラム、反応用チューブ類などのガラス製器具を購入する。また、閉鎖循環式光反応装置用の各種特殊ガラス器具が必要となる。 旅費については、触媒化学討論会(秋田大学)に参加し、成果発表、情報収集するための必要な経費であるに計上する。 その他、国際雑誌に論文を投稿する際に、論文校閲を依頼するために研究費を使用する予定である。
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