2013 Fiscal Year Research-status Report
サイト選択的金属担持メソポーラス型チタニア光触媒による水素生成システムの開発
Project/Area Number |
23550126
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
堤 健 宮崎大学, 工学部, 助教 (00304163)
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Keywords | 光触媒 / 金属担持触媒 / メソポーラス材料 / チタニア / 水素生成 / バイオリファイナリー |
Research Abstract |
メソポーラス型チタニアのゾルゲル法による合成過程で、ドデシルアミン塩酸塩界面活性剤と1-ドデカンチオールとPtCl2との反応により得られる(C12H25SH)PtCl2錯体を組み合わせた混合液晶をメソポーラス構造の鋳型とし、白金がメソポーラス触媒の細孔内部に選択的に担持されたサイト選択的白金担持メソポーラスチタニア触媒を得た。さらに2つ目の金属助触媒の担持を検討した結果、白金と金の異なる2種の金属を担持したチタニア触媒が水素生成において高い活性を示すことを見出した。これは、白金がプロトン還元反応において、金がアルコール犠牲剤の酸化反応において触媒として働くことで、光酸化還元反応が効率良く進行したことに起因すると考えられる。金担持試薬としては、塩化金酸などの金属イオンではなく、ナノ金分散液が最適であった。ナノ金分散液は、ナノサイズ(1~4 nm)の0価の金粒子が、メソポーラス細孔径よりも大きいポリエチレンイミンに取り囲まれているために、細孔の外にサイト選択的に担持されていると考えられる。TEM分析により、金がチタニア触媒にナノサイズオーダーで担持されていることが明らかとなった。 白金/金二元金属担持チタニア触媒にバイオマスであるグルコースを犠牲剤に用いて光反応を行ったところ、これまでよりも高い水素生成活性を示した。金に代えてルテニウムを用いた場合には、触媒活性は低下した。グルコースの酸化反応には、ルテニウムなどの貴金属群の中で金触媒が有効であることが知られている。従って、チタニア触媒の光吸収で発生した正孔が担持金助触媒のグルコース酸化により効率的に消費されることで、正孔が蓄積されないことが重要であることを確認した。 光触媒を利用したバイオリファイナリーにおいては、半導体光触媒反応システムを用いた5-ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)の定量的合成法を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は、メソポーラスチタニア光触媒を用いた効率的なバイオマスからの水素生成を実現するために、水素生成助触媒の白金とバイオマス酸化反応助触媒となる金を同時に担持した白金/金二元金属担持メソポーラスチタニア触媒の開発に成功した。従来法と異なり、異種金属をメソポーラス細孔内、外に選択的に担持する方法を開発した。結果、グルコースを犠牲剤に用いた水素生成反応の効率化を実現することができた。異種金属を異なるサイトに選択的に担持する方法は他の固体触媒、材料開発にも応用可能であり意義深いと言える。 光触媒を用いたバイオリファイナリーでは、フルクトースのHMFへの変換反応に光触媒反応システムを適用することで、従来よりも温和な条件で反応を行えることを見出した。結果、副反応、分解反応の問題を克服し、HMF合成収率はほぼ100%に達した。 フローリアクターシステムを利用した反応の効率化に関しては、ブレンステッド酸修飾ハイブリッド型光触媒によるHMF合成とバイオマスの糖化において、FEP(Fluorinated ethylenepropylene)チューブを用いたフローリアクター反応システムを構築し、バッチ反応と比べて反応が効率的に進行することを見出した。 以上の研究成果に関して、講演および学術誌執筆依頼を受け、各種学会および国際誌にて発表することができた。以上の研究発表を通じて、ある程度の評価は得られたと考えている。しかし、本研究を遂行してきた中で、グルコースを用いた場合には、金助触媒が有効であるという当初の計画にはなかった新たな知見が見出された。当初の計画以上の知見が得られたため、実験データの更なる検証を行う必要が生じた。本研究をまとめ、さらに成果発表のために、1年間の研究期間延長に至った。
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Strategy for Future Research Activity |
白金をメソポーラス細孔内部にサイト選択的に担持したサイト選択的白金担持メソポーラスチタニア光触媒の合成法については、概ね確立できたと考えている。今後は、XRD、TEM、窒素吸脱着法による比表面積測定を行い、合成した触媒の構造と光触媒活性の相関性を解明する。また、白金/金二元金属担持メソポーラスチタニア触媒については、グルコースに対する金の作用について調査を行い、二元金属担持触媒の有用性を明らかにする。特許、学会、および論文発表のための不足分データ取得を行い、本研究を完成させる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度に、サイト選択的金属担持メソポーラス型酸化チタン触媒の水素生成活性の分析を行い、学会、論文発表する予定であったが、バイオマス原料を犠牲剤に用いた場合には、水素生成活性の担持金属依存性が高いことが明らかとなったため、計画を変更し、新たに酸化チタンに担持する助触媒金属の検証し、その成果発表を平成26年度に行うに至ったため、未使用額が生じた。 平成25年度に、サイト選択的金属担持メソポーラス型酸化チタン触媒の水素生成活性の分析を行い、学会、論文発表する予定であったが、バイオマス原料を犠牲剤に用いた場合には、水素生成活性の担持金属依存性が高いことが明らかとなったため、この成果発表のために計画を変更し、未使用額が生じた。従って、国際雑誌に研究成果を投稿するための、論文校閲を依頼するために研究費を使用する。また、触媒化学討論会(秋田大学)に参加し、成果発表するための必要な旅費を計上する予定である。 その他、学会参加費、成果発表を行うための追加データを取得するための消耗品の経費にあてることとしたい。
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