2011 Fiscal Year Research-status Report
触媒反応での立体選択性の逆転を可能にする第2世代型アニオン性カルベン配位子の創出
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23550128
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
坂口 聡 関西大学, 化学生命工学部, 准教授 (50278602)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | N-ヘテロサイクリックカルベン / NHC / アゾリウム塩 / 不斉触媒反応 / 配位子 / リガンドデザイン / α-アミノ酸 / β‐アミノアルコール |
Research Abstract |
本研究課題である第2世代型NHC配位子前駆体となる官能基化されたアゾリウム塩の合成ルートを確立した。第2世代型配位子として次の3種類の化合物を創製することに成功した。(1)エステルアミド置換アゾリウム塩:すでに天然α-アミノ酸の還元体であるβ-アミノアルコールからヒドロキシアミド置換アゾリウム塩(第1世代型NHC配位子前駆体)を開発している。本研究では、天然α-アミノ酸のエステル体を利用して、エステルアミド置換アゾリウム塩を先と同じ合成ルートにより得ることができた。(2)(CH2)2リンカーを有するヒドロキシアミド置換アゾリウム塩:第1世代型アゾリウム塩は、ヒドロキシアミド置換部位とNHCがメチレン(CH2)リンカーを介して結合していたが、本研究では炭素数を一つ増やした(CH2)2リンカーをもつ置換アゾリウム塩を開発した。その合成法として、市販のアゾールとアクリル酸エステルのアザマイケル反応により、対応するエステル置換基が(CH2)2リンカーを介してアゾール環に結合した生成物をほぼ定量的な収率で得た。続いて、得られた置換アゾールを水素化ナトリウム存在下、β-アミノアルコールと反応させアミド化を行った。最後に、ハロゲン化アルキルとのカップリング反応を行うことで、目的生成物である第2世代型のヒドロキシアミド置換アゾリウム塩を良好な収率で得ることに成功した。(3)アルキル置換アゾリウム塩:同様に天然α-アミノ酸の還元体であるβ-アミノアルコールを利用して、先述の配位子前駆体とは分子構造骨格が異なるアルキル置換アゾリウム塩を設計し、その合成を行った。その結果、芳香族求核置換反応を利用して4段階で目的生成物を合成することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究結果として、当初の目的通り3種類の第2世代型NHC配位子前駆体となるキラルな置換アゾリウム塩を合成することに成功した。これらの化合物は、いずれも過去に報告例のない新規な化合物であり、不斉触媒反応におけるキラル配位子としての利用が期待できる。実際、すでに予備的な検討により、それぞれの化合物が不斉触媒反応において特徴のある配位子として機能することを明らかにしており、次年度以降、詳細に検討する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的の一つは、入手容易な天然α-アミノ酸を利用し、できるだけ少ない工程で簡便に合成できるキラル配位子を開発することである。申請者のこれまでの研究により、NHC前駆体となる置換アゾリウム塩がキラル配位子の鍵化合物になることが明らかになっている。この化合物は、従来の発想にないまったく新しいタイプに分類されるキラル配位子である。今後もこれまで開発してきた置換アゾリウム塩の分子構造に基づき、さらなる機能を付与することで、不斉触媒反応において、より高活性なキラル配位子の設計・開発を行う。また、具体的な不斉触媒反応として、医薬品や香料などの多くの生理活性物質の合成において利用されているCu触媒共役付加反応を中心に検討する予定である。これまでリン化合物を鍵とする様々なキラル配位子が開発されてきたが、リン化合物より安定性がよく、その合成も簡便に行えるキラルNHC配位子に関する研究は未開拓のままになっている。本研究で開発したキラルNHC配位子は、その分野におけるブレークスルーになることが期待される。Cu触媒共役付加反応において、従来から使用されているキラル配位子と比べ、より高活性で、高いエナンチオ選択性を実現できるような配位子の創製を目指す。また、天然α-アミノ酸から誘導したNHC配位子を利用して、Cu触媒前駆体の置換あるいはリガンドデザインによって、共役付加反応における立体選択性を逆転させ、両エナンチオマー生成物をつくりわける手法の開発を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度に引き続き、第2世代型NHC配位子前駆体となる官能基化された新規なアゾリウム塩の開発を行い、ヒドロキシアミド置換基のプラットホームとなるアゾリウム環骨格を改良する。具体的には、ビス(NHC)を基本骨格とし、NHCのサイドアームにヒドロキシアミド置換基を導入する。また、ヒドロキシアミド基とヒドロキシアルキル基をそれぞれ有するアゾリウム塩の創製を検討する。 さらに、次年度からはアゾリウム塩の不斉触媒反応における配位子としての利用に関する研究を行う。特に有機合成化学上極めて有用なCu触媒共役付加反応を検討する。すでに第1世代型NHC配位子は、従来に報告例のない特徴的な配位子として機能することを明らかにしている。本研究では、開発した第2世代型NHC配位子を利用し、高収率かつ高エナンチオ選択的に対応する触媒反応生成物を得るための反応条件を確立する。 なお、一連のアゾリウム塩の合成のために、β-アミノアルコールなどの薬品を消耗品として購入し使用する。また、触媒反応の評価は主としてガスクロマトグラフィー(GC)を用いて行うが、GC分析のための窒素や空気などのガスボンベを消耗品として購入する。さらには、得られた研究成果を第62回錯体化学討論会(富山大学)や第12回国際有機化学京都会議(リーガロイヤルホテル京都)などで発表するための旅費の使用を計画している。
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Research Products
(23 results)