2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23550129
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
田中 耕一 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (10116949)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 多孔性金属‐有機構造体 / MOF / 有機配位子 / キラルMOF / ビナフチルジカルボン酸 / 三次元細孔構造 / 単結晶X線解析 / 固体CDスペクトル |
Research Abstract |
多孔性金属‐有機構造体(MOF)は、金属イオンあるいは金属イオンクラスターと架橋する有機配位子で自己集合的に構築でき、ゼオライトに似た規則的な三次元細孔構造や優れた特性(高い比表面積、熱安定性)を持つため最近大きな注目を集めている。MOFはナノサイズの空孔やオープンチャンネルを持ち、ガス貯蔵、異性体分離、触媒作用、センサー、ドラッグデリバリーなど様々な分野に応用され始めている。MOFへのキラリティーの導入は魅力的なテーマであり、キラル触媒や不斉合成、エナンチオ吸着やエナンチオ分離といった潜在的な応用を可能にする。本研究は、キラルな有機配位子を用いて新規のキラルMOFを多数創出し、環境調和型の新規キラル触媒や高効率なキラル分離材料への応用を目指すのが目的である。この目的のため、本年度は以下の研究を実施した。 2,2’- ジヒドロキシ-1,1’-ビナフチル-3,3’-ジカルボン酸のラセミ体を合成し、これをロイシンメチルエステルとの錯体形成を利用して光学分割を行った。合成したエナンチオピュアーな2,2’- ジヒドロキシ-1,1’-ビナフチル-3,3’-ジカルボン酸を各種の金属塩と反応させて、新規ホモキラル金属-有機構造体(MOF)を合成した。単結晶X線解析の結果、MOFは結晶学的にa軸に沿って右回りの1次元キラルらせんチューブ構造を形成していることが明らかとなった。また、らせんチューブ構造中にジメチルホルムアミド分子を包接していることも判明した。また、粉末X線解析、熱分析(TG)、赤外スペクトル、固体CDスペクトルなどの測定を通して、MOFの詳細なキャラクタリゼーションを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の研究の具体的な目標は以下の3点である。(1)ビナフチル骨格を有するジカルボン酸誘導体のラセミ体を合成し、シンコニジンやブルシンなどのキラル塩基との錯体形成により光学分割して光学活性体を得る。(2)合成したキラル有機配位子と各種の金属イオン(Cu,Zn,Co,Mn,Ni等)との配位結合を利用して様々な空孔サイズを有するキラルMOFを構築する。(3)こうして合成したキラルMOFの三次元結晶構造を明らかにする。 この内、(1)に関しては、2,2’- ジヒドロキシ-1,1’-ビナフチル-3,3’-ジカルボン酸のラセミ体を合成し、これをロイシンメチルエステルとの錯体形成を利用して光学分割を行った。(2)に関しては、2,2’- ジヒドロキシ-1,1’-ビナフチル-3,3’-ジカルボン酸の光学活性体を用いて、各種の金属塩(Cu,Mn,Co,Zn,Ni)と反応させて新規ホモキラル金属-有機構造体(MOF)を合成した。(3)に関しては、上記のすべてのキラルMOFのX線結晶解析を行い結晶構造を明らかにすることに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に合成したキラルMOFのナノ細孔を反応場として活用する不斉選択的な有機合成反応を検討する。すなわち、ルイス酸性の配位不飽和な金属サイトに基質分子が配位し、金属サイトの周囲のキラル環境の影響を受けて立体選択的に反応試剤が攻撃し、高いエナンチオ選択性で光学活性化合物を生成することが期待される。このような新しい不斉選択的有機合成反応を多数開発する。具体的には、メソエポキシドに対するアルコール類の不斉付加反応による光学活性アルコールの合成、メソエポキシドに対するアミン類の不斉付加反応による光学活性アミノアルコールの合成、チオアニソール類の過酸化水素水によるスルホキシドへの不斉酸化反応などについて研究を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の使用内訳は概ね以下のとおりである。物品費の主なものは試薬、溶媒などの消耗品の購入に必要な経費である。また、旅費の主なものは学会参加に必要な経費である。
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Research Products
(24 results)