2011 Fiscal Year Research-status Report
レニウムの不飽和結合活性化を活用した多置換芳香族化合物の選択的合成
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23550130
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
西山 豊 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (30180665)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梅田 塁 関西大学, 化学生命工学部, 助教 (70467512)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | レニウム / 触媒 / 不飽和結合 / 多置換 / 芳香族化合物 |
Research Abstract |
新しい触媒の開発は、効率的な新合成法の創出の大きな原動力につながり、有機合成・有機工業化学の大きな進展をもたらす。申請者はレニウム錯体を利用した新規触媒的合成反応を追求する中で、レニウム錯体がユニークな触媒作用を示すことを認めた。特にブロモならびにクロロレニウムペンタカルボニル[ReX(CO)5](X = Cl and Br)はLewis酸的な性質を有しており、様々な炭素‐炭素結合形成反応の触媒となることを明らかにし、それらのレニウム錯体触媒を利用した反応を展開してきた 。この反応は、遷移金属錯体がLewis酸的な触媒作用を示す極めてまれな例であると共に、従来のLewis酸触媒は、水などと容易に反応し取り扱いに注意が必要であるのに対し、レニウム錯体は比較的空気、水等に安定であり容易に取り扱いができ、また中性に近い条件下で反応を行うことが可能となる。そのため、一般のLewis酸の反応に見られるような副生成物の排出も少なく、従って原子効率の高い環境調和型合成法の構築が可能になると期待される。 平成23年度は、レニウム錯体を触媒に用いたN-ベンジリデンベンゼンアミンとトリメチルアリルシランからの4-メチル-2-フェニルキノリン合成を円滑にかつ高選択的に進めるために、レニウム錯体、反応温度、反応時間、溶媒、基質の量比など様々な反応条件を検討し、まず反応の最適化を図った。その後、この反応の一般性について検討を加えた。さらに、レニウム錯体を触媒に用いた新規炭素‐炭素結合形成反応を追求し、o-エチニルベンズアルデヒドとアルキンとのベンズアニュレーション反応による2,3-二置換ナフタレン誘導体の合成、ならびに1-フェニルプロピンとスチレンオキシドあるいはフェニルアセトアルデヒドとの反応に基づく1,2-二置換ナフタレン誘導体の合成の可能性を探った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は、レニウム錯体による炭素‐窒素二重結合ならびに炭素‐炭素三重結合の活性化を活用した新規触媒反応の開発を中心に検討した。 その結果、1)ベンズアルデヒドとアニリンとから合成した、N-ベンジリデンベンゼンアミンとトリメチルアリルシランとの反応をブロモレニウムペンタカルボニル(ReBr(CO)5)触媒存在下で行うと、[4+2]付加環化反応が進行し、4-メチル-2-フェニルキノリンが得られることを見出した。そこで、この反応を円滑にかつ高選択的に進めるために、レニウム錯体、反応温度、反応時間、溶媒、基質の量比など様々な反応条件を検討し、まず反応の最適化を図った。その後、芳香族アミンと芳香族アルデヒドから合成した種々のN-ベンジリデンアリールアミンとトリメチルアリルシランやアリルシラン誘導体との反応を行い、本反応の一般性を明らかにすると共に、有用な各種キノリン誘導体の合成法として完成させ、この反応がユニークな新規環境調和型キノリンの合成法となることを明示した。2)o-フェニルエチニルアルデヒドとアルキンとのベンズアニュレーション反応による2,3-二置換ナフタレン誘導体合成を完成した。3)1-フェニルプロピンとスチレンオキシドあるいはフェニルアセトアルデヒドとの反応に基づく1,2-ナフタレン誘導体合成の可能性を探った。 平成23年度の研究により、レニウム錯体による炭素‐窒素二重結合ならびに炭素‐炭素三重結合の活性化に基づく、キノリンならびに2,3-二置換ナフタレン誘導体の合成に成功した。また、レニウム錯体による炭素‐炭素三重結合の活性化1,2-ナフタレン誘導体の合成に関する知見を得るに至っており、当初の研究目標は達成できているものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の研究において、1-フェニルプロピンとスチレンオキシドあるいはベンジルアルデヒドとの反応をブロモレニウムペンタカルボニル(ReBr(CO)5)触媒存在下で行うと1-フェニル-2-メチルナフタレンが得られるとの知見を得た。 そこで平成24年度はまず、1)レニウム触媒存在下、1-フェニルプロピンとスチレンオキシドあるいはベンジルアルデヒドとの反応に基づくナフタレン誘導体の合成の反応条件(レニウム錯体、反応温度、反応時間、溶媒等)の最適化を図る。反応条件の最適化後、ベンゼンアセトアルデヒドと様々なアリ-ル置換アセチレン、脂肪族アルキン、アリール置換エチレンオキシドとの反応を行い、1,2-二置換ナフタレン誘導体の合成の可能性を探る。2) レニウム錯体が比較的空気、水等に安定であり容易に取り扱いができることに着目し、不安定なベンゼンアセトアルデヒド使用という問題の克服のため、フェニルアセトアルデヒドの等価体であるフェニルアセトアルデヒドから誘導したアセタールを用い、反応系中に水を共存させることで、系中で不安定なフェニルアセトアルデヒドを発生させる手法をとることで、より効率的な合成法の確立を目指す。3) N-ベンジリデンベンゼンアミンとトリメチルアリルシランからのキノリン誘導合成の検討段階において、レニウム錯体を触媒に利用すると、アルデヒドとアミンから一段階でキノリンが合成できるとの知見を得た。そこでその反応の最適化を図ると共に、様々なキノリン誘導体の合成法としての可能性を探る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H23年度は、海外での学会の研究成果の発表を計画していたが、申込時期の関係で実際の発表を行うことができず、その結果として繰越金が生じた。H23年度と同様に研究室で所有する機器装置ならびに、関西大学化学生命工学部 化学・物質工学科で共有する分析機器を利用することで可能であり、新たな設備備品類の購入は必要なく設備備品費は申請しないが、本研究課題を行うにあたり、次年度も多くの試薬、溶媒、ガラス器具が必要であり、また反応により得られた生成物の確認に使用しているガスクロマトグラフ装置のための水素、窒素、ヘリウムガスが必要である。そのため、試薬、溶媒、ガラス器具、ガスなどの購入に研究費の大部分を使用する予定である。 また、研究成果の公表は、国内外の学会(日本化学会春季年会、有機金属化学討論会など)での発表、学術論文誌への掲載を通じて積極的に行うために、国内・外国旅費、その他に論文掲載の印刷費に使用する予定である。
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