2012 Fiscal Year Research-status Report
レニウムの不飽和結合活性化を活用した多置換芳香族化合物の選択的合成
Project/Area Number |
23550130
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
西山 豊 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (30180665)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梅田 塁 関西大学, 化学生命工学部, 助教 (70467512)
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Keywords | レニウム触媒 / 芳香族化合物 |
Research Abstract |
新しい触媒の開発は、効率的な新合成法の創出の大きな原動力につながり、有機合成・有機工業化学の大きな進展をもたらす。申請者はすでにレニウム錯体を利用した新規触媒的合成反応を追求する中で、レニウム錯体がユニークな触媒作用を示すことを見出した。特にブロモならびにクロロレニウムペンタカルボニル[ReX(CO)5](X = Br and Cl)はLewis酸的な性質を有しており、様々な炭素‐炭素形成反応の触媒となる本研究では、申請者が新たに見出したレニウム錯体の触媒作用に基づく新しい炭素‐炭素結合形成反応を追求し、レニウム錯体を触媒に用いた斬新かつユニークな多置換多環式芳香族化合物の選択的合成法の確立を目指した。 本年度は以下の成果を得た。1)レニウム錯体存在下、1-フェニルプロピンとスチレンあるいはベンジルアルデヒドとの反応を行うと1‐フェニル‐2‐メチルナフタレンが得られることを新たに見出した。そこで、反応条件(レニウム錯体、反応温度、反応時間、溶媒等)の検討を行い、生成物の収率の向上を目指したが、収率は中程度にとどまった。そこで、ベンジルアルデヒドジメチルアセタールを基質に用い水を共存させ、ベンジルアルデヒドを系中で発生させ、1‐フェニルプロピンとの反応を行う方法を試みた。その結果、反応は効率的に進行し、目的とする1‐フェニル‐2‐メチルナフタレンが収率良く得られることが明らかとなった。続いて、様々な1‐フェニル‐2‐アルキルナフタレン誘導体合成へと、この反応の展開を図った。2)レニウム錯体存在下、2‐(フェニルエチニル)ベンズアルデヒドと内部芳香族アルキンの反応を行うと、2,3‐二置換ナフタレンが得られることを併せて見出した。 これら、新たに見出した2つの反応を利用することで、1,2‐ならびに2,3‐二置換ナフタレン誘導体の選択的な合成が可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年、24年の2年間にわたりレニウム錯体の触媒作用に基づく新しい炭素‐炭素結合形成反応を追求した。 平成23年度は、芳香族アミンとアルデヒドから合成した種々のN‐ベンジリデンアリ‐ルアミンとトリメチルアリルシランとの反応に基づくキノリンの新規合成法を見出し、その反応を各種キノリン誘導体の合成法として完成させた。 平成24年度は、レニウム触媒を用い、内部芳香族アルキンとベンジルアルデヒド、スチレンオキシドとの反応を行うと1‐アリール‐2‐アルキルナフタレンが一段階で合成できることを新たに見出した。しかし、収率が中程度にとどまった。そこで、ベンジルアルデヒドジメチルアセタールの加水分解により系中でベンジルアルデヒドを発生させ、直接内部芳香族アルキンとを反応させる方法を次に考え検討を行った。その結果、1‐フェニル‐2‐メチルナフタレンの収率が著しく向上し、目的の化合物が収率良く得られることが明らかとなった。この反応を各種1‐アリール‐2‐アルキルナフタレン合成へと展開を図り、効率的な1,2-二置換ナフタレン誘導体の新規合成法を確立した。また、レニウム錯体存在下、2‐(フェニルエチニル)ベンズアルデヒドと内部芳香族アルキンの反応を行うと、2,3‐二置換ナフタレンを選択的に合成できることも併せて見出した。 これらの結果は、レニウム錯体の触媒に用いた斬新かつユニークな多置換多環式芳香族化合物の選択的合成法であり、新たなレニウム錯体の触媒的な利用法を提供するものである。さらに多置換多環式芳香族化合物が選択的に合成できることからも、有機合成・有機工業化学の分野において大きなインパクトを与える研究結果であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
ベンゼン環が連結したオリゴマー、またはポリマーに関する研究は近年盛んに行われており、メタ位あるいはパラ位で連結したオリゴまたはポリフェニレンは超分子、有機機能材料の分野で有用な化合物群であることが知られている。しかしながら、より立体的に込み合ったオルトフェニルオリゴマーは、パイ電子が高密度に集積化し、らせん構造を有する興味深い化合物であるにもかかわらず、合成の困難さのためほとんど知られていない。 平成24年度の研究においてレニウム錯体存在下、2‐(フェニルエチニル)ベンズアルデヒドと内部芳香族アルキンの反応を行うと、2,3‐二置換ナフタレンを選択的に合成できることを見出した。そこで複数の炭素‐炭素三重結合を有するジイン化合物と2‐(フェニルエチニル)ベンズアルデヒドとのベンズアニュレーション反応を行うと全く合成例が知られないベンゼン環とナフタレン環が連結したオルトフェニルオリゴマー類似体の合成が可能となると考えた。 そこで、平成25年度は以下の点を中心に追求する。 1)2‐(フェニルエチニル)ベンズアルデヒドと2,2‐ビス(フェニルエチニル)フェニルアセチレンとの反応をまず行い、ベンゼン環とナフタレン環が交互に連結した オルトフェニルオリゴマーの合成をまず行う。2)1)の合成を達成した後は、芳香族環に置換基をもつ2,2‐ビス(フェニルエチニル)フェニルアセチレン誘導体との反応を行い、置換基をもつベンゼン環とナフタレン環が交互に連結した様々なオルトフェニルオリゴマーの合成を行う。3)ブタジインを用いることで異なったパターンでベンゼン環とナフタレン環が交互に連結したオルトフェニルオリゴマーの合成を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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