2011 Fiscal Year Research-status Report
主鎖に分子認識部位と動的軸性キラリティーを有するπ共役らせん高分子の創製と応用
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23550133
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
前田 勝浩 金沢大学, 物質化学系, 准教授 (90303669)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | らせん / 光学活性 / 軸性キラリティー / 円二色性 / 記憶 / 共役高分子 / クラウンエーテル |
Research Abstract |
本年度は、分子認識部位としてクラウンエーテル、重合性基としてエチニル基を導入した新規ビフェニル誘導体を合成し、クラウンエーテル部位と相互作用可能な光学活性アミノ酸の過塩素酸塩等の光学活性化合物を添加することにより、ビフェニルの動的軸性キラリティーが一方向に制御可能かどうかを円二色性(CD)スペクトル等を用いて検討した。さらに、これらのビフェニル誘導体をビルディングブロックとして剛直なπ共役系で連結した高分子を合成し、光学活性化合物との錯形成により一方向巻きのらせん構造がポリマー主鎖に誘起されるかどうかについても詳細に検討した。 その結果、クラウンエーテル部位と光学活性化合物との錯形成によるビフェニルの動的軸性キラリティーの制御には、3,3’-位に導入する置換基の嵩高さが大きな影響を及ぼすことが明らかになった。また、これらのビフェニル誘導体をパラジウム錯体によるカップリング反応を利用して芳香族ジハロゲン化合物と共重合することによって、ポリ(ビフェニレンエチニレン-alt-フェニレンエチニレン)誘導体を合成することに成功した。得られたポリマーは、アセトニトリル中では、光学活性アミノ酸の過塩素酸塩等と錯形成することにより、主鎖のビフェニルユニットの動的軸性キラリティーが一方向に制御されるだけでなく、ポリマー主鎖が一方向巻きのらせん構造へと自発的に折りたたむことがCD測定の結果から明らかになった。さらに、一方向巻のらせんを誘起した後で、光学活性アミノ酸をアキラルなグリシンで完全に置換しても、誘起された一方向巻きのらせん構造が、ほぼ完全に記憶として保持されることが明らかになった。興味深いことに、アキラルなグリシンで置換後も、アセトニトリル中では一方向巻きのらせん構造、クロロホルム中ではランダムな構造へと、溶媒の種類によって可逆的なコンホメーション変化を示すことを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に計画していた「動的軸性ユニットを有するビルディングブロックの合成と軸性キラリティーの制御」および「動的軸性キラルユニットを主鎖骨格に有する新規π共役高分子の合成と構造」について、ほぼ計画通りに実験を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に計画していた段階までほぼ計画通りに進み、期待していた成果が得られたので、次年度も当初の計画通り、「動的軸性キラルユニットを主鎖骨格に有する新規π共役高分子の物性評価」と「対象物質のキラリティーに関する情報を吸収や発光、色調変化により検知可能なキラルπ共役高分子システムの開発」を目的として、合成した新規π共役高分子の物性評価および高感度なキラリティーセンサーへの応用等、機能発現に向けた研究を展開する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度得られた成果を国内の学会や国際会議等で発表するための旅費およ学術論文として発表するための英文添削費等に使用する。また、薬品やガラス器具等の物品購入に使用する。
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