2012 Fiscal Year Research-status Report
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23550141
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
木原 伸浩 神奈川大学, 理学部, 教授 (30214852)
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Keywords | 酸化分解性 / ジアシルヒドラジン / 爆発性 / 分子内求核反応 / エポキシ樹脂 / 硬化剤 / 長鎖エステル / 水素結合 |
Research Abstract |
無水条件下でも酸化分解を行うために、水の代わりに求核攻撃を行うヒドロキシ基を有するジアシルヒドラジンを合成し、その酸化分解を検討した。その結果、γ位にヒドロキシ基を持つジアシルヒドラジンは無水条件でも爆発せず、しかも速やかに酸化分解することを明らかにした。さらに、γ-ヒドロキシジアシルヒドラジンは二酸化窒素や一酸化窒素などの酸化性のガスにさらすだけでラクトンへと酸化分解した。このことはγ-ヒドロキシジアシルヒドラジンを主鎖に持つポリマーが酸化性のガスによって乾式でも酸化分解できることを意味しており、酸化分解性ポリマーを実用化する上で重要な知見である。γ-ヒドロキシジアシルヒドラジンを主鎖に持つポリマーの合成を検討し、合成しにくいγ-ヒドロキシジアシルヒドラジン構造を先に構築しておいてから重合する必要があることを明らかにした。前年度の研究成果を発展させ、ジアシルヒドラジン構造を有するビスフェノールに長鎖エステル構造を導入したところ、溶解性が飛躍的に向上し、融点も低く、室温でもエポキシ樹脂と混和させることができるビスフェノールが得られた。このビスフェノールを硬化剤として用いてエポキシ樹脂を硬化させたところ、ガラスを強力に接着し、次亜塩素酸ナトリウム水溶液によって酸化分解する、酸化分解性接着剤となることを明らかにした。ポリジアシルヒドラジンの溶解性を向上させるために、酸化によって取り除けるアミドの保護基としてヒドロキシメチル基を導入することを検討し、ヒドラジンではなくジアシルヒドラジンとホルムアルデヒドとの反応が効果的であることを見出した。アシルジイミドの高い反応性を利用し、芳香環のアシル化を検討したが、トリメトキシフェニル基でも求核性が十分ではないことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の目的はさまざまなポリマーにジアシルヒドラジン構造を組み込み、新しい酸化分解性高分子材料を開発することである。当初の研究計画のうち、アシルセミカルバジドの酸化分解性とポリウレタンへの酸化分解性の付与については、今年度は十分な成果が得られなかったが、昨年度にかなりの進捗がみられており、全体としては予定通りである。酸化分解性エポキシ樹脂については研究計画以上の大幅な進展が見られた。また、その他の研究計画については十分な成果が得られなかったが、ジアシルヒドラジンの低溶解性と乾式酸化分解時の爆発性を改善する研究は、当初の研究計画にはなかったが、酸化分解性ポリマーの材料としての利用を考える上で極めて重要な研究テーマであり、これらの研究で大幅な進展がみられたことから、全体としては、大きな研究目標に向かって順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
ポリウレタンへの酸化分解性の付与について検討する。酸化分解性接着剤を開発するための酸化分解性硬化剤についてさらに検討を進めると共に、酸化分解性接着剤の物性について検討する。ジアシルヒドラジンを合成するための基本反応であるエステルとヒドラジンの反応について、効率の極めて悪い場合があるので、その原因を明らかにすると共に対策を検討する。酸化分解性を持つ無機ポリマーの開発、ポリジアシルヒドラジンの分子間水素結合の阻害について検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は1名であったRAを、次年度には2名雇用することとなったが、当初研究費予算ではまかなえないことが明らかとなったため、今年度予算から一部を次年度に使用することにした。
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