2012 Fiscal Year Research-status Report
サブナノ空間・親和性制御ポリマーの設計および次世代型高性能気体分離膜の創出
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23550142
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Research Institution | Fukui University of Technology |
Principal Investigator |
増田 俊夫 福井工業大学, 工学部, 教授 (60026276)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阪口 壽一 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60432150)
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Keywords | 高分子合成 / 高分子構造・物性 / 反応・分離工学 / ナノ材料 / 環境材料 |
Research Abstract |
1) 核置換ポリ(1-クロロ-2-フェニルアセチレン) (PCPA) の局所運動性と気体透過性の相関に関する研究: PCPAの局所運動性を準弾性中性子散乱法を用いて検討した。局所運動性の遅い運動の成分(数十ps)が二酸化炭素およびメタンの透過性の拡散係数と相関することが明らかになった。 2) ポリ(1-トリメチルシリル-1-プロピン) [PTMSP]の気体透過性の経時変化の検討: PTMSPAは、最も高い気体透過性を示すポリマーの1つである。しかし、ポリアセチレン類の気体透過性は時間とともに多少とも透過性が低下するという問題点が知られている。本研究では、PTMSPの6週間にわたる経時変化について、真空乾燥器内、空気中、および密封ポリエチレンの袋の中で保存して、検討した。保存条件により、酸素透過係数は6週間後にはもとの値の60~75%まで低下した。 3) カテコールユニットを有するポリ(ジフェニルアセチレン)に関する研究: ジメトキシ基を有するポリ(ジフェニルアセチレン)膜から酸触媒により脱保護して合成したカテコールユニットを有するポリマー膜の気体透過性を検討した。このポリマーのCO2透過係数(PCO2)とPCO2/PN2は30 barrerと39であり、大きい分離係数を示した。 4) イミダゾリウム塩を含むポリ(ジフェニルアセチレン)に関する研究: イミダゾリウム塩に代表されるイオン液体は二酸化炭素を選択的に溶解させるため、二酸化炭素の吸収剤として注目される。ブロモエトキシ基を有するジフェニルアセチレンはTa触媒により良好な収率で重合し、高分子量ポリマーが得られた。生成ポリマー膜に対してメチルイミダゾールを反応させ、イミダゾリウム塩を含むポリ(ジフェニルアセチレン)の合成に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記(1)の研究では、核置換ポリ(1-クロロ-2-フェニルアセチレン) を用いて気体透過性に及ぼす局所運動性の効果を明らかにすることができた。置換ポリアセチレンの気体透過性にはミクロボイドだけでなく局所運動性も関与することが確認された。 上記(2)の研究では、従来種々の不統一なデータが示されているポリ(1-トリメチルシリル-1-プロピン) の気体透過性の経時変化について、3種類の保存方法を適用して検討した。その結果、気体透過性がある程度低下し、その程度は保存法に依存することが明らかとなった。このようなデータは基礎および応用の両面で有用と考えられる。 上記(3)、(4)の研究では、二酸化炭素に対して親和性を示す水酸基やイミダゾリウム塩を導入した新規ポリマーの合成を達成し、生成ポリマー膜の気体透過性および透過選択性を明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
1)準弾性中性子散乱法を用いて、非常に高い気体透過性を示すポリメチルインダン部位を有するポリ(ジフェニルアセチレン)誘導体の局所運動性と気体透過性との関係について検討する。この研究からどのような構造の置換ポリアセチレンが高い気体透過性を示すかを示唆する結果が得られることが期待される。 2)球状の置換基とビフェニル基を併有するポリ(ジフェニルアセチレン)誘導体はミクロボイドを多く有する可能性がある。それらのポリマーの設計、合成、および気体透過性の評価などに関する研究をさらに進める。 3)カテコールユニットを有するポリ(ジフェニルアセチレン)の溶液にTaCl5やAlCl3などを少量加えるとゲル化することが見出した。カテコールユニットが金属に配位し、金属を介して架橋していると考えられる。このポリマーと金属の相互作用を明らかにし、気体透過性にどのように影響するか解明する。 4)イミダゾリウム塩を含むポリ(ジフェニルアセチレン)の対アニオン交換反応を検討し、対アニオンの種類が気体透過性にどのような影響をするかを解明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
気体透過性測定装置および種々の測定装置は現有設備を使用するので、次年度の研究費はガラス器具や試薬などの消耗品の購入に主に充当する。また、情報の収集や成果の発表のために学会に参加する予定であるが、その費用としてもある程度使用する予定である。
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Research Products
(19 results)