2011 Fiscal Year Research-status Report
側鎖回転運動を利用した高イオン伝導性高分子固体電解質の創製
Project/Area Number |
23550143
|
Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
松本 幸三 近畿大学, 分子工学研究所, 准教授 (90273474)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
|
Keywords | イオン伝導性ポリマー |
Research Abstract |
リチウムイオンに配位可能で軸回転性を有すると考えられる置換基を有する重合性モノマーとしてスクシンイミド構造を有するビニルエーテルを合成した。具体的には、N,N-ジメチルホルムアミド中で2-クロロエチルビニルエーテルとコハク酸イミドの混合物に水素化ナトリウムを加え60℃で24時間加熱することにより目的とする化合物を単離収率70%で得た。 さらに、このモノマーにジクロロメタン中-78℃で三フッ化ホウ素のエーテル錯体を作用させることによって数平均分子量5,500、重量平均分子量12,500の白色固体ポリマーが得られた。 このポリマーのガラス転移温度を示差走査熱量分析により求めたところ、53℃と見積もられ、予想以上に高いガラス転移を示したことから、比較的硬い主鎖骨格を有することがわかった。このポリマーのアセトニトリル溶液にモノマーユニットに対して20mol%および100mol%のリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを加え電極上にキャストしフィルムサンプルを作成し、十分乾燥した後に、交流インピーダンス法を用いてイオン伝導度を測定したところ、いずれのリチウム塩添加量のサンプルにおいても10-8 S/m以下の極めて低いイオン伝導度であることがわかった。これはポリマーが室温でガラス状態であることが原因であると考えられ、かさ高いスクシンイミド構造の置換基が主鎖に対して非常に近いところに存在することにより主鎖およびスクシンイミド構造の置換基の運動性が低下しているためと考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していたとおりに、軸回転性の置換基を持つビニルエーテル系モノマーを合成し、それを重合して、軸回転性のペンダント置換基を有するビニルエーテル系ポリマーを合成することに成功した。 ただし、イオン伝導性としては期待した値はいまのところはまだ達成されてはいない。次年度以降に分子設計を再考し、ポリマー主鎖と軸回転性置換基の間のスペーサーや、ポリマー主鎖およ軸回転性置換基を改良した新たなモノマーおよびポリマーの合成を行い、物性評価を行うことが必要とされる状況である。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、高分子鎖の運動性を高めてイオン伝導度の向上を目指す。そのために、まずポリマー主鎖とかさ高い軸回転性官能基との距離を離す分子設計を行う。また、主鎖骨格の運動性自身を高くするために高い柔軟性を有するケイ素系ポリマーの使用を検討するとともに、軸回転性置換基としてリチウムイオンに対して高い親和力を有する5員環環状カーボナート構造の導入を検討する。具体的には下記の2項目に関して検討を行う。1. 主鎖と軸回転性官能基の間にオリゴオキシエチレンをスペーサーとして有するビニルエーテル系ポリマーの合成とイオン伝導度の検討。 2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチルビニルエーテルの水酸基をスルホン酸エステル化した後、コハク酸アミドのナトリウム塩を作用させることで、ジオキシエチレンをスペーサーとしてコハク酸アミド構造を有するビニルエーテルモノマーを合成し、得られたモノマーをカチオン重合することにより目的とするビニルエーテル系ポリマーを合成し、リチウム塩を添加してそのイオン伝導性を評価する。2. 主鎖がケイ素ポリマーで軸回転性置換基として5員環環状カーボナート構造を有するポリマーの合成とイオン伝導性の検討。 主鎖に化学的かつ電気的に安定で、柔軟性の高いケイ素ポリマーを利用し、主鎖から適切なスペーサーを介して軸回転性置換基にリチウム塩に対して高い親和性を示す環状カーボナート構造を導入する。ケイ素系ポリマーとしては、例えば4員環環状ケイ素化合物のシラシクロブタンの開環重合により得られるポリシラトリメチレン等を検討する。得られるポリマーに対して、種々のリチウム塩を添加してそのイオン伝導性の評価を行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度までの研究費で研究に必要な大型機器の購入が終了し、研究設備は完全に整った。 平成24年度の研究経費は70万円を予定しており、そのうち、実験に必要となるモノマー合成試薬、重合触媒、溶媒、ガラス機器、フィルター類、イオン伝導度測定用の電極、不活性ガス等の消耗品の購入に55万円を使用する計画である。 また、最新の研究動向の調査と研究成果の発表のために学会参加の旅費に15万円を使用する計画である。
|
Research Products
(1 results)