2012 Fiscal Year Research-status Report
側鎖回転運動を利用した高イオン伝導性高分子固体電解質の創製
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23550143
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
松本 幸三 近畿大学, 工学部, 准教授 (90273474)
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Keywords | イオン伝導性ポリマー |
Research Abstract |
軸回転型の官能基として5員環環状カーボナート構造の置換基を、極めて柔軟でかつ化学的、電気化学的に安定なポリマーであるポリカルボシランに導入したポリマーを新規に合成して、イオン伝導性の評価を行った。当該ポリマーは、5員環環状カーボナート構造を持つ含ケイ素4員環状化合物シラシクロブタン(SBMC)を遷移金属触媒を用いて重合することに容易に得られることを見出した。SBMCは、1-メチル1-クロルシラシクロブタンにブテニルグリニヤール反応剤をさせて得られた化合物をm-クロル過安息香酸で酸化した後、臭化リチウムを触媒として二酸化炭素を付加させることで合成できた。得られたpolySBMCにリチウム塩(リチウムビストリフルオロメタンスルホンイミド)を添加してイオン伝導度を測定したところ、25℃で59マイクロS/mのイオン伝導度を示した。さらに、2つの含ケイ素4員環構造を有する化合物ヘキサメチレン-1,6-ビス(1-メチルシラシクロブタン)(HMBS)を架橋剤として添加して、リチウムイオンバッテリー用の一般的な電解液(LiPF6のエチレンカーボナート・ジエチルカーボナートの混合溶媒)中でSBMCを重合すると、ゲル電解質が得られることを見出した。このゲル電解質は、リチウムイオンバッテリーの内部でモノマーを重合させて調製することが可能で、この方法で合成したリチウムイオンバッテリーは、ゲル電解質バッテリーでありながら通常の電解液を用いて組み立てたバッテリーと同等のすぐれた電池特性を有することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度初頭に計画していたとおり、柔軟で化学的安定性に優れたポリカルボシランを基本骨格としたポリマーに軸回転性の官能基として5員環環状カーボナート構造を持つ置換基を導入することに成功した。このポリマーにリチウム塩を添加した場合に、確かにイオン伝導性の発現が見られたことから、5員環環状カーボナート構造がイオン伝導に関与しているものと推測されたが、イオン伝導性は期待されたほど高い値ではなかった。これは、5員環環状カーボナート構造の導入数が多すぎて、ポリカルボシランの柔軟性、運動性が低下してしまったためであると考えられる。実際、この推察は、通常のアルキル置換ポリシラシクロブタンのガラス転移温度は、-80℃以下であるのに対して、今回のpoly(SBMC)のガラス転移温度は、-15℃程度であったことからも支持されると考えている。しかしながら、本研究の過程で、このポリカルボシランは、非常にバッテリー特性に優れたゲル電解質を与えることが見出されたことは、評価に値すると考えてる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、5員環環状カーボナート構造の置換基を軸回転型の官能基として利用して、引き続き柔軟性が高く、化学的、電気化学的に安定なポリカルボシランの側鎖に導入したポリマーを用いてイオン伝導性材料の検討を行う。特に、5員環環状カーボナート構造の置換基の導入率を減らして、ポリマー鎖の柔軟性と運動性の向上を図る。そのための方策として、5員環環状カーボナート構造を持つシラシクロブタンモノマー(SBMC)と5員環環状カーボナート構造を持たない通常のアルキル基を持つシラシクロブタンの共重合を行い、5員環環状カーボナート構造の導入率の制御するとともに、得られたポリマーにリチウム塩を添加して、高分子固体電解質してのイオン伝導性評価を行う。さらに、この共重合タイプのポリマーを電解液中で架橋することにより新たなゲル電解質を合成し、ゲル電解質リチウムイオンバッテリーの特性評価の検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度までの研究費で研究に必要な大型器機の購入が終了しており、現在研究設備は還元に整っている。平成25年度の研究経費は70万円を予定しており、そのうち、実験に必要となるモノマー合成試薬、重合触媒、溶媒、ガラス機器、フィルター類、イオン伝導度測定用の電極、不活性ガス等の消耗品の購入に55万円を使用する計画である。また、最新の研究動向の調査と研究成果の発表のために学会参加の旅費として15万円を使用する計画である。
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Research Products
(5 results)