Research Abstract |
前年度までに, フラーレン(C60, n型半導体)と亜鉛フタロシアニン(ZnPc, p型半導体)からなるp/n型有機フィルムがヒドラジン酸化を誘起する光アノードとして機能することを見いだすとともに, それを適用して光触媒システムの設計・構成により, 化学量論的なヒドラジンの光触媒分解により窒素(酸化生成物)と水素(還元生成物)が生じることを明らかにした. また, 最終年度には, ペリレン誘導体(PTCBI, n型半導体)/コバルトフタロシアニン(CoPc, p型半導体)系も上記の系と同様にヒドラジン分解活性を有し, C60/ZnPc系よりも約2倍程度活性な光触媒システムを構成できることを見いだした. いずれの系もフタロシアニン表面へのナフィオン膜の結合が有効に作用し, ヒドラジンの表面濃度の向上により, より高い光触媒活性をもたらした. 光電気化学データに基づいたメカニズムの提案も行い, ヒドラジン酸化は1段階4電子過程で進行している可能性についても示した. ヒドラジンはアンモニア酸化分解時の中間体と位置づけられるが, ヒドラジンの可視光分解の例はこれまでに報告がなかったことを考慮すると, 本研究を通して重要な知見と成果が得られたと言える. さらに, 最終年度において, カーボンナノチューブに担持したIr-Ptをナフィオン中に分散して触媒膜として用い, それをペリレン誘導体(PTCBI, n型半導体)/無金属フタロシアニン(H2Pc, p型半導体)系光アノードに結合してアンモニア分解を検討した. その結果, 可視光照射下, かつ電位規制下でアンモニアの分解による窒素発生(酸化生成物)と水素発生(還元生成物)を確認できた. 今後は触媒の調製条件を中心とした最適化に関する検討を進め, 水素発生を伴ったアンモニア分解用の可視域光触媒システムの創製に向けて研究を継続していく.
|