2011 Fiscal Year Research-status Report
ピンサー型ニッケル錯体を用いた高機能電解酸化触媒の開発
Project/Area Number |
23550147
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
小泉 武昭 東京工業大学, 資源化学研究所, 准教授 (60322674)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ニッケル錯体 / ピンサー型配位子 / 電気化学 / 電解酸化触媒 / メタノール酸化反応 / 結晶構造 |
Research Abstract |
本研究は、ダイレクトメタノール燃料電池(DMFC)の開発において解決すべき最も重要な課題の一つであるメタノールの低電位酸化触媒の開発を行うものである。これまで、DMFCのメタノール酸化触媒としては白金およびその合金が用いられてきているが、これらは高価であるとともに、メタノール由来の一酸化炭素により金属電極表面が被毒されるという問題点がある。本研究では、一酸化炭素による被毒を防ぎ、且つ安価でより低電位でメタノールの酸化を実現できる触媒の開発を目的とする。一酸化炭素は低原子価の金属に対して強い相互作用を持つため、0価の金属は被毒を受け易い。さらに、酸化反応をより低電位で行うためには、用いる金属の酸化還元電位をより負側に設定する必要性がある。酸化還元活性且つ白金属よりも安価な金属としてニッケルを用い、配位子を設計することで安定且つより低電位で酸化反応を行える金属錯体を開発し、修飾電極を作成することにより高安定性・高効率な触媒系の創製を目指す。 平成23年度は、低電位に酸化還元準位を示すニッケル錯体の合成に関する研究を行った。強い電子供与能を有し且つ安定な錯体を与えるピンサー型配位子に着目し、ピンサー型ニッケル錯体の合成を試みた。ピンサー型配位子としては、アーム部位に第二級チオアミドを含む(SCS)-型、ジアルキルアミノメチル基を含む(NCN)-型のものを合成した。(SCS)-型の配位子は、イソフタルアルデヒド、硫黄と相当するアミンを用いるWillgerodt-Kindler反応により、(NCN)-型の配位子は、2-ブロモ-m-キシレンをNBSによりα,α'-位を臭素化し、第二級アミンと反応させることによりそれぞれ合成した。合成した配位子と塩化ニッケルを反応させることにより、ピンサー型ニッケル錯体を合成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在まで、4種類のピンサー型配位子を合成し、ニッケル錯体の合成を試みている。第二級チオアミドをアーム部位に有する錯体については、中心芳香環としてベンゼンおよびピロール基を有する2種類の配位子を、相当するジアルデヒド、硫黄およびベンジルアミンを用いたWillgerodt-Kindler反応によって合成し、これらと臭化ニッケルとの反応によって、ニッケル錯体の合成まで完了している。アミンをアーム部位に有するピンサー型配位子((NCN)-型配位子)は、2,α,α’-トリブロモベンゼンとジアルキルアミンとの反応によって合成した。現在のところアルキル基としてエチル基およびイソプロピル基を有する2種類についてほぼ合成を完了し、錯体合成を行っているところである。さらに、他の置換基を有する(NCN)-型配位子の合成にもとりかかっている。(SCS)-ニッケル錯体については、メタノール中での電気化学測定を行い、電解酸化触媒としての機能を検討しており、+0.7 V (vs. Fe+/Fe)で触媒電流が流れることを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、各種ピンサー型配位子を有するニッケル錯体の合成を行う。特に、ジアルキルアミノメチル基をアーム部位に有するピンサー型ニッケル錯体の合成を推進する。現在のところアルキル基としてエチル基およびイソプロピル基を有する配位子を合成しているが、さらにアルキル鎖長の長い誘導体を合成し、アミノ基からの金属中心への電子供与を大きくした錯体の合成を目指す。また、ピンサー型配位子の中心芳香環への電子供与性基の導入も行い、置換基の種類・導入位置が金属錯体の電気化学的性質に与える影響について系統的に調べる。これらの錯体の電気化学的性質を明らかにした上で、メタノールの電気化学的酸化反応に対する触媒能を評価する。最も低電位でメタノールを酸化できる錯体を用いて修飾電極を作成し、高活性・高効率なメタノール酸化触媒電極を創製する。電極上への修飾は、キャスト法や電解重合法を用いて行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、研究費として平成24年度分直接経費120万円、および平成23年度繰り越し金393,849円を加えた1,593,849円を使用する予定である。試薬類(金属塩、有機合成用試薬、溶媒、不活性ガスなど)、ガラス器具(フラスコ、シュレンク管、光学セル他)、電気化学測定用電極等の消耗品費、電気化学測定用特注セル制作費などの物品費として1,193,849円を計上する。また、国内外の学会参加・発表のための参加登録費・旅費、研究協力者との打ち合わせのための旅費等として40万円を計上する。なお、合成した錯体の電気分光測定を行うために使用する電気化学用特注セルを平成23年度に購入予定であったが、製作に時間がかかるため次年度の購入に変更した関係で、393,849円を平成24年度に繰り越した。
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