2013 Fiscal Year Research-status Report
ヘテロダイマー導入による電子型有機強誘電体の磁性と誘電性の相関解明
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23550149
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
米山 直樹 山梨大学, 医学工学総合研究部, 准教授 (80312643)
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Keywords | 強相関電子系 / 誘電率 / リラクサー / 部分分子置換 |
Research Abstract |
【PT添加塩での超伝導発現】昨年度までに行ったMT分子を添加したk-(ET)2Cu2(CN)3(MT添加塩)との比較の目的で,一回り大きなPTを添加した試料(PT添加塩)に関する研究に着手した.PT分子の添加量の増大に伴って単結晶X線回折の実験データの悪化が顕著に見られ,不純物分子としてPTが結晶中に取り込まれていると推測できる.MT添加塩と異なり,PT添加塩では低温で金属化することが明らかになった.電気抵抗はある温度Tmaxで極大値を示し,約5 Kで超伝導転移を示す.TmaxはPT添加量と正比例することから PT分子が正の化学圧力効果をもたらしてモット絶縁体相から金属への相転移が起きたと考えられる.金属化してしまうことからPT添加塩では誘電率の測定が困難で,本研究課題の目的にはそぐわないが,大きな乱れ効果を伴う伝導層カチオン分子の部分置換によって金属化が生じることは興味深い現象であり,引き続き研究を進める必要がある. 【b’-(ET)2(ICl2)1-x(AuCl2)xの磁性と誘電特性】昨年度から着手した陰イオン置換したb’塩の結晶をx=0-1の全範囲で新たに結晶育成を行い,X線構造解析,EDX分析,誘電率および静磁化率を測定した.x=1.0での誘電率はx=0のものとほぼ同一の温度依存性と周波数依存性を有し誘電特性に特別な違いが見られないが,混晶比x=0.5では誘電率のピーク温度が大きく抑制され,誘電率に乱れの効果が強く現れることが明らかになった.磁化率の反強磁性転移温度でもx=1から0.5に向かって急減しx=0-0.5の間では一定値を取り,化学圧力と乱れの効果とで良く理解できる振る舞いを持つことがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度はPT添加塩を中心に研究を進めたが,この系では低温で超伝導が発現するため,本研究目的である誘電特性の解明とは異なる方向への進展となった.当初の研究目的を達成するため,1年の研究期間の延長申請を行いその承認を得た.b’塩に関しては磁性と誘電特性に関する基礎情報の獲得を,ほぼ計画通りの成果として達成した.
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Strategy for Future Research Activity |
k-(ET)2Cu2(CN)3の重水素体による部分置換体を育成し,その誘電率と磁化率を測定する.さらにMT添加塩の低温でのスピン磁化率測定のため,分子研共同利用によるESR測定を予定している.これらの結果を比較考察することで本研究を総括する.b’塩については焦電測定を行い,強誘電転移温度と置換量との相関を明らかにする.また,PT添加塩での超伝導発現については本研究の目的とは異なるものの,今後の新しい展開が期待される成果が出ていることから,主にその超伝導特性の研究を中心に低温磁場中での物性評価を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
達成度欄で述べた理由で25年度の研究進捗の遅れがあり,本年度の国際学会での発表を見送ったため.およびメーカーの長期欠品により本研究に必要な試薬が購入できなかったため. 全額を成果発表と試薬類の購入に使用する.
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