2012 Fiscal Year Research-status Report
相補的な塩橋を利用した3次元有機フレームワークの構築と応用
Project/Area Number |
23550151
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
古荘 義雄 近畿大学, 付置研究所, 准教授 (00281270)
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Keywords | アミジン / カルボン酸 / 塩橋 / 二重らせん / オリゴマー / 円二色性スペクトル / 蛍光 / マクロサイクル |
Research Abstract |
本研究課題では、新しい概念に基づく人工光合成素子の開発を念頭に置いて、アミジンとカルボン酸から形成される相補的な塩橋を利用して、色素などの機能団を精密に配置させた1~3次元構造体をつくる方法論を確立することを目的として研究を進めている。本年度は、以下に示すように、アミジンとカルボン酸の2量体からなる二重らせん型分子と、アミジン基とカルボキシル基を分子内に併せもつマクロサイクルを合成し、それらの構造と安定性について集中的に検討し、外部刺激より動的な構造変換を行うことができることを示した。 1.リンカー部位に様々な機能団をもつアミジンの2量体を合成し、相補的なカルボン酸2量体との二重らせん形成挙動について詳細に検討した。その結果、様々な芳香環や白金アセチリド錯体を組み込んでも、安定な二重らせんを形成することが明らかになった。また、アミジン基上に導入したキラルな置換基により、二重らせんの巻き方向を制御することができることが分かった。リンカー部位に導入した機能団とアミジン上の置換基の構造を系統的に変えていき、それぞれの二重らせん分子の安定性(2つの互いに相補的な分子鎖の会合定数)を見積もり、リンカー部位の構造とアミジン上の置換基の二重らせん形成挙動に及ぼす影響を明らかにすることができた。 2.アミジンとカルボキシル基を併せもつマクロサイクルを合成し、その動的な構造変換について検討した。このマクロサイクルは有機溶媒中では、アミジンとカルボキシル基が塩橋を形成することにより、8の字型にねじれた構造を取っている。このねじれの方向はアミジン上に導入したキラルな置換基によって制御されていることが分かった。このマクロサイクルに酸や塩基を加えることで可逆的に塩橋の解離・再結合を行うことができることを示した。また、この動的な構造変換は蛍光の大きな変化を伴うことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、アミジンとカルボン酸から形成される相補的な塩橋を利用して、有機機能団が原子レベルで精密に配置された3次元ネットワーク(3次元有機フレームワーク)を構築することを目指している。本年度は、昨年度に引き続いて、3次元ネットワークを構築する手法の基礎を固めるため、アミジンとカルボン酸から形成される相補的な塩橋を利用した相補的二重らせん分子の構造特性について詳細な検討を行った。 1.まず、リンカー部位に様々な機能団をもつアミジンの2量体を合成し、相補的なカルボン酸2量体との二重らせん形成挙動について詳細に検討した。その結果、様々な機能団をリンカー部位にもつ、安定な二重らせんを構築できることが明らかになった。また、アミジン基上に導入したキラルな置換基により、二重らせんの巻き方向を制御することができることが分かった。興味深いことに、リンカー部位に導入する機能団の構造と電子的特性により二重らせんの安定性を制御できることも見いだした。 2.アミジンとカルボキシル基を併せもつマクロサイクルを合成し、その動的な構造変換について検討した。このマクロサイクルは有機溶媒中では、アミジンとカルボキシル基が塩橋を形成することにより、8の字型にねじれた構造を取っている。このねじれの方向はアミジン上に導入したキラルな置換基によって制御されていることが分かった。このマクロサイクルに酸や塩基を加えることで可逆的に塩橋の解離・再結合を行うことができることを示した。 現時点では、当初の目的である3次元集合体の構築には成功していないものの、そこへ向けた基盤固めという点では着実に進展しており、「(3)やや遅れている」との自己評価に至った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、これまでに得られた知見をもとにして、多官能性のアミジンおよびカルボン酸の自己集合による1~3次元超分子集合体の構築を行う。生成する集合体の構造は「モノマー」における官能基の数と相対配置によって一義的に決まる。例えば、対角線上にある二官能性のアミジンとカルボン酸からは一次元の超分子ポリマーが生成する。4官能性のアミジンとカルボン酸からは平面の二次元シート上高分子が生成し、正八面体状の6官能性モノマーと組み合わせることで3次元構造体が得られる。モノマーはテレフタル酸のように単純なものについては市販品が利用できるが、そうでないものについては有機合成的手法で調製する。得られた超分子集合体の構造は、X線構造解析や赤外吸収スペクトル、窒素ガスの吸着実験等により調べる。塩橋はある種の金属錯体の置換活性な金属配位結合と同様の安定性(会合定数)を示すことが分かっているが、3次元ネットワークの創り出す特異なナノ空間を応用するためには、熱的および溶媒等に対する安定性を確保することが絶対必要である。この点については、示差走査熱量測定(DSC)を用いて、3次元構造体の熱的安定性を調べる。この3次元超分子集合体をきれいに構築するために最も重要な点は、MOFの場合と同様に、速度論的にトラップされてしまった不完全な構造にとどまることを防いで、いかにして系を熱力学的に安定な状態へもって行くかにかかっている。申請者らは塩橋を利用した二重らせんに関する研究の過程で、ある種の溶媒や酸・塩基の使用などにより、この点が克服できることを見いだしている(Y. Furusho et al., JACS, 2008, 130, 7938)。本系においても同様の手法が有効であると考えられるので、溶媒や温度を系統的に変化させて条件を最適化する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
これまでに、実験設備についてはこれまでに一通り揃えることができた。来年度、合成する予定のトポロジカル超分子、高分子の合成および分析には、高価な金属触媒や重溶媒を含む多種多様の薬品類、石英セルを含むガラス器具、理化学機器等の購入が必要であり、これらの購入に必要な経費を消耗品にあてる。また、研究打合せおよび国内での発表は、それぞれ年間数件程度を予定している。また、論文の作成などにかかる費用も予定している。
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Research Products
(9 results)