2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23550152
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
道岡 千城 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (70378595)
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Keywords | 電子物性 / 化合物磁性 / 積層化合物 / 遍歴磁性 |
Research Abstract |
新たな複合積層化合物の発展を目指し、物質開発と物性の解明研究を行った。 異常原子価元素を有する積層化合物の物性研究として、特に興味深い現象が観測された4価のCrを有するセレン化物CrSe2に関して研究状況を記述する。本研究ではジ化カリウムKN3を原料に用いた前駆体KxCrSe2の新たな合成経路を確立し、その前駆体を用いることで純良なCrSe2の合成に成功した。そのような純良試料を用いて電子線回折測定および低温X線回折測定による構造解析の結果、CrSe2は2段階の構造相転移を示し、低温相でCrが6量体を形成することが明らかになった。また電気抵抗測定及びゼーベック測定によりキャリアの温度変化を調べたところ、高温相から中間相への相転移に伴い、ホール量が大きく増加していることが明らかとなった。これは、相転移に伴いSeサイトのホール量が増加したことを示唆しており、Crがアニオンから電子を奪う特異な電子状態が実現していることを示唆している。4価のCrを有する化合物において、相転移に伴いアニオンサイトのホール量が変化する化合物はこれまでほとんどなく、非常に興味深い。 またSrCo2P2とその周辺物質ついて遍歴強磁性量子臨界点近傍の物性研究を行った。その結果SrCo2P2における強磁場磁化過程から60 Tでメタ磁性転移を発見し、またSrをCaに置換することでメタ磁性転移磁場低下する強磁性量子臨界点に近づく振る舞いを明らかにした。さらにPサイトをGeに置換した物質SrCo2(P1-xGex)2においてはx = 0.025, 0.05とGeを置換するに従い、メタ磁性転移磁場が減少し磁化曲線の跳びが小さくなった。またx = 0.2以上の試料ではメタ磁性転移が観測されなかった。これはGeの置換に伴いCoの3dバンドへのホールドープにより、メタ磁性転移を引き起こす状態密度の高いバンドから電子が取り除かれたと考えられる。
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Research Products
(6 results)