2011 Fiscal Year Research-status Report
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23550155
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
御崎 洋二 愛媛大学, 理工学研究科, 教授 (90202340)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 分子性導体 / 多段階酸化還元 / サイクリックボルタンメトリー / ドナー-アクセプター系分子 / 電子構造 |
Research Abstract |
チオフェンの2,5位に強いドナー性を示すDT-TTF骨格と強いアクセプター性を示すジシアノエチレン基を導入した新規チオフェン拡張型ドナー-アクセプター(D-A)系分子を分子設計・合成し、電子スペクトル、電気化学的性質、分子軌道計算、伝導度測定から物性を評価した。標的分子は既知の原料から2段階で合成することができ、各段階の収率(70~95%)は良好であり、効率的に合成できることが分かった。合成した新規D-A系分子のC≡N伸縮振動はTCNQよりも14-15 cm-1低く、分子内電荷移動状態をとっていることが示唆された。また、最長吸収極大波長はジシアノエチレン基を持たない比較化合物よりも175 nmレッドシフトしている。この結果は密度汎関数法(DFT法)に基づく理論計算から導き出された標的分子のHOMO-LUMOギャップ(2.29 eV)が比較化合物のHOMO-LUMOギャップ(3.48 eV)よりも狭くなっていることと一致する。さらにサイクリックボルタンメトリ-法及び電気化学的分光法により、電気化学的性質・酸化状態の構造について調べた。これらの結果も理論計算の結果と良い一致がみられた。中性固体の加圧成形試料について伝導度を測定し、8.5x10-6 S cm-1の比較的高い伝導性を示すことを明らかにした。DT-TTF骨格が固体中で強い総合作用を形成しやすいことや分子内電荷移動状態であることが、高伝導性が達成された要因と考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していたドナー-アクセプター(D-A)系分子の合成に成功し、溶液中の分子の性質を紫外可視吸収スペクトル・サイクリックボルタンメトリ-・分子軌道計算等により、明らかにできている。また、加圧成形試料でも比較的高い導電性が達成されている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き新規ドナー-アクセプター(D-A)系分子の合成を行いその性質を明らかにする。H23年度は単結晶の導電性を明らかにできなかったため、これら新規分子の単結晶化を行い、結晶構造と導電性の関係を明らかにすることで、新たな設計指針を得て分子設計にフィードバックさせながら研究を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度は基礎的なデータを収集するための実験を中心に研究を進めた。そのため、既存の設備、ガラス器具、試薬を用いることができたため、研究費の執行額を抑えることができた。このデータに基づき平成24年度以降には引き続き新規分子の合成に必要な試薬、ガラス器具等に使用する予算を計上する。さらに単結晶化を行うための特殊なガラス器具等の導入を計画している。なお、得られた成果は学会発表や、国際的な論文誌で報告予定であり、出張費・投稿料・別刷り印刷費も必要となる。
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Research Products
(48 results)