2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23550159
|
Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
白上 努 宮崎大学, 工学部, 准教授 (60235744)
|
Keywords | イオン液体 / 発光 / 有機高分子 |
Research Abstract |
PFCP-ILとポリメタアクリル酸メチル(PMMA)との複合ゲル(PFCP-IL/PMMA)の「加熱発光増強効果」の発光メカニズムについて検討した。加熱保持時間に対する発光強度比では、良好な直線関係が得られた。この直線の傾きは、単位時間あたりの発光増強度を反映していることから、発光増強速度(Vem)と定義した。Vemに対する温度依存性を検討したところ、良い相関関係が観測された。一般に、高分子電解質内のイオンの移動度に対する温度依存性は、Vogel-Tamman-Fulcher (VTF)式が適用されることが知られている。この式では、イオン移動度の逆数と絶対温度の逆数が直線関係となることで、イオン移動度が高分子のガラス転移温度(Tg)に依存することを示す。Vemをイオン移動度と見なして、VTF解析を行った結果、加熱保持温度の逆数に対して良好な直線関係が得られた。このことは、PFCP-ILが加熱による高分子鎖のセグメント運動と協同して移動することで、発光会合体が形成され、発光強度が増強されることを強く示唆している。さらに、PFCP-ILのアルキルアンモニウム部位の構造的な嵩高さもVemに大きく反映されることから、熱誘起発光増強は、高分子内をPFCP-ILが移動することによって形成される発光会合体の増加によると考えられた。この結果は、使用する高分子のTgが低い方がPFCP-ILが移動しやすいことを示している。実際に、PMMAよりもTgの低いポリ塩化ビニル(PVC)との複合ゲルを調製した結果、150℃の加熱において、発光強度比がPMMAよりも50倍増強され、Vemも425倍になることがわかった。この結果は、推定した熱誘起発光増強特性のメカニズムの妥当性を示すものであり、発光前後の視認性が高いことから、PFCP-IL/PVCゲルが熱履歴センサーとして有望であることも示唆している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度での研究計画では、加熱による発光増強のメカニズムを解明することが目的であった。その目的は十分に達成された。また、得られたメカニズムを基に、熱履歴センサーとしてより実用化に近づくことができるPFCP-IL/ポリ塩化ビニル(PVC)ゲルの開発にも成功している。したがって、現在までの達成度としては、当初の研究計画以上に進展していると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度で得られた研究結果から、熱応答に着目した「環境応答型発光性イオン液体ゲル」の開発に関する基礎的な知見は得ることができた。特にPFCP-IL/PVCゲルは、熱履歴センサー(光を感じて発光ずるプラスチック材料)として必要な高い視認性を持つ。25年度の研究では、PFCP-ILの含有量およびPVCの分子量等を変化させることで、発光開始温度が制御されたゲルの開発を行い、PFCP-IL/PVCゲルを熱履歴センサーとしてより実用化に近いもの開発することを目指す。さらに、外部応答刺激として、熱以外に、電気および機械的圧力に着目し、ゲル調製時における電圧印加による発光強度比の変化や、調製したゲルへの伸縮運動による発光強度比の変化を検討することも目指す。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費については、イオン液体合成用として、試薬およびガラス器具、発光測定用として精密石英発光測定セル等の消耗品の購入を計画している。 旅費については、東京への学会発表(2回)および(株)プリヂストン中央研究所(東京)との研究打ち合わせ(2回)を予定している。 その他として、合成時に発生する有機溶媒の処理費および学内の分析機器使用料を計上している。
|
Research Products
(4 results)