Research Abstract |
1,4,7,10位にアルキル側鎖を有するテトラセンはアルキル鎖長や形状の変化により、アルキル側鎖のコンホメーションが大きく変化しそれに伴い分子配列の変化と固体光物性の変化を誘導することを見出している。この現象が1,4,7,10位以外の位置にアルキル置換基を持つ場合でも生じるかを検証するために、2,3位および2,3,8,9位にアルキル側鎖を有するテトラセンの合成を行った。アントラキノンと3,4-ジアルキルチオフェンジオキサイドとのDiels-Alder反応を経由しテトラセンキノンを中間体として得て、ヒドリド還元とヨウ化水素酸による還元でテトラセンへの変換を行った。1,4,7,10位アルキル置換体に比べ、2,3位アルキル二置換体および2,3,8,9位アルキル四置換体は結晶性が著しく低下し、単結晶を得ることが困難であった。また、固体の色調を見ると、2,3位アルキル二置換体ではアルキル鎖長がプロピル基で黄色味がかったオレンジ色で、ブチル、ペンチル、ヘキシル基でオレンジ色とアルキル鎖長による色の変化は大きくないことがわかった。2,3,8,9位アルキル四置換体では、プロピル基でオレンジ色、ブチル、ペンチル、ヘキシル基で黄色とアルキル鎖長が長くなるにつれて若干の短波長シフトが見られたが、アルキル鎖長による大きな色の変化が見られなかった。アルキル鎖がベンゼン環上で隣合って存在する場合にアルキル側鎖の配座が複雑になり、アルキル鎖長変化による配座変化が大きく生まれなかったのが原因であると考察した。
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