2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23550164
|
Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
幅田 揚一 東邦大学, 理学部, 教授 (40218524)
|
Keywords | 食虫植物型分子 / 銀イオン / サイクレン / Ag+ - pi 相互作用 |
Research Abstract |
平成24年度は「水溶性銀食い分子」および「発色団を導入した銀食い分子」の開発に着手した. 1)「水溶性銀くい分子」を合成する方法を確立した.具体的には,芳香環側鎖にカルボキシル基を4個または2個導入した化合物を合成した.芳香環側鎖にカルボキシル基を4個導入した化合物に水中でAg+イオンを添加すると,サイクレン部位に補足された銀イオンを4枚の芳香環が包み込むことを,1H NMR滴定実験によって確認した.さらに,この化合物に水中で,様々な金属イオンを添加してUV-Visスペクトルを測定したところ,Li+, Na+, K+, Mg2+, Ca2+, Sr 2+, Ba2+, Co2+, Ni2+ イオンを添加してもスペクトルに変化はなかったが,Ag+を添加したときだけ,特異的にUV-Visスペクトルが変化した.一方,Pb2+とZn2+を添加したら,少しだけスペクトルに変化が見られた.Pb2+とZn2+の場合は,側鎖に導入したカルボキシルキがこれらの金属イオンに配位したことで微細なスペクトル変化を与えたと考えている.この結果は,銀くい分子の初めての応用例である. 2)「発色団を導入した銀くい分子」として,4枚の芳香環側鎖のうち,向かい合っている2枚の側鎖としてピレンを導入した化合物を合成した.この化合物に様々な金属イオンを添加して溶液中における蛍光スペクトルを測定したところ,特定の金属に対して選択的にスペクトルが変化することがなかった.一方,各金属の1:1錯体を単離し,それらの固体蛍光を測定したところ,Ag+錯体だけで特異的なエキシマー蛍光を示した.この配位子自身はモノマー蛍光を示したことから,ピレンどうしが互いに分子間で重なり合った構造をとっていると考えた.この構造はX線結晶構造解析によって支持された.この結果は,新たな光機能性材料へ展開できると考えている.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「水溶性銀くい分子」は構造化学的研究としてではなく,本申請の目的である「機能性を付加した銀くい分子」としての例を示すことができた. 「発色団を導入した銀くい分子」は固体蛍光によるアプローチを行った結果,このテーマにおいても「機能性を付加した銀くい分子」としての例を示すことができた. 以上のことから,本申請の目的を達成していると考えられる.
|
Strategy for Future Research Activity |
機能の複合化を進める.現在合成を計画している分子としては,1個の銀くい分子によるクリプタンド型分子,および複数の銀食い分子を連結したクリプタンド型銀食い分子を開発する.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度からの繰り越し額が180万円弱発生した.これは,当初,購入する予定であった固体CDスペクトル用の付属部費の購入を,その測定信頼性が目的の能力を示さないとの判断から見送ったために生じたものである.本研究を推進するためには,より多彩な化合物を合成する必要があるため,この繰り越し額を含めて,残りの研究経費の多くを合成用試薬,溶媒,重水素化溶媒,および,化合物を分離するためのシリカゲル等に充てる.また,論文をより高いレベルの雑誌に掲載するために,英文校正も行う.
|