2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23550166
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
矢島 辰雄 関西大学, 化学生命工学部, 准教授 (40434823)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 立体異性体の選別 |
Research Abstract |
研究計画に基づいて、まず三脚型配位子の設計を行うために、はじめにトリス(2-ピリジルメチル)アミン (TPA)誘導体である、光学活性 1-(N,N-ビス(2-ピリジルメチル)アミノ)-エチル-2-ピリジン (MeTPA)の合成を行った。光学活性MeTPAを合成するために、合成中間体である 1-アミノエチル-2-ピリジン (aepy)を光学分割し、光学活性 aepyから光学活性 MeTPAを合成する方法と、ラセミ MeTPAを合成し、光学分割により光学活性 MeTPAを得る方法を検討した。両方法のうち、ラセミ MeTPAを経る合成法の方が収率は良いが、それでも 15%程しかなかった。 また、光学活性三脚型配位子と同様の効果を持つ配位子として、L-ヒスチジン誘導体である N-(1-メチル-3-オキソ-3-フェニル-1-プロペン-1-イル)-L-ヒスチジンメチルエステル (BMVH)を合成し、HMVHとその銅(II)錯体の結晶中における構造を X線結晶構造解析から決定した。Cu(II)-BMVH錯体では、 BMVHが三座で銅に配位していることから、残りの配位座にアミノ酸が配位でき、またヒスチジンの α位の立体配置により、配位したアミノ酸の選別が可能であると予想された。そこで、この BMVHの銅(II)錯体を用いて、様々なラセミアミノ酸の光学分割試験を行った。(RS)-2-アミノ酪酸 (ABA)を Cu-BMVH錯体により処理したところ、光学純度 49%の (R)-ABAが得られた。さらには、操作温度により、得られる ABAの立体配置が異なる現象も見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究の目的は、一つの立体異性体を選択的に取り出す膜埋込型金属錯体の開発である。現在のところ、その根幹となる金属錯体の設計を行っているが、数種類の配位子の合成にとどまっていること、また収率が低いため錯体の形成に至っていない配位子もあり、ラセミアミノ酸の光学分割試験を行ったものは一種類のみである。さらには、これらの金属錯体の膜への親和性の検討は行っておらず、もっぱら溶液中での光学分割試験のみであることから、今後は早急に膜への取り込みを試験しながら膜への親和性を増すように配位子の調整を行い、実際に膜取込型金属錯体として立体異性体の選別が行われるか検討する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
一つには、光学分割能が確認された L-ヒスチジン誘導体 (BMVH)を用い、膜に親和性を持たせるように構造を調整した金属錯体を用いて、膜への取り込みを試験する。また、同様に 金属イオンに対して三座または四座で配位する L-ヒスチジン誘導体を合成し、この金属錯体のラセミアミノ酸に対する分割試験をして成績の良いものを膜に親和性が高まるように誘導体化し、膜への取り込みが確認できた金属錯体から、膜を使った立体異性体の選別ができるかを検討する。 また、収率が低く、合成の検討段階にある光学活性 TPA誘導体 (MeTPAなど)は、合成ができ次第、金属錯体とし、光学活性体選別能を試験する。成績の良いものから膜への親和性を上げるように誘導体化を行い、BMVH誘導体と同様に膜による光学分割試験を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は、錯体の膜への取り込みの検討を行えなかったために、これらの検討に掛かる研究費として 863,275円を次年度に繰り越した。そのため次年度は、この繰越金を今年度の物品費と合わせて主に、実験に必要な、試薬、ガラス器具の購入に充てる。旅費は、現在の研究成果について討論を行うため、ヨーロッパ生物無機化学会議(スペイン)への出席に充てる予定である。
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Research Products
(15 results)