2012 Fiscal Year Research-status Report
大きな協同効果を示す鉄スピンクロスオーバー錯体を用いた機能デバイスの開発
Project/Area Number |
23550167
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
黒田 孝義 近畿大学, 理工学部, 教授 (80257964)
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Keywords | スピンクロスオーバー錯体 / 鉄(II)金属錯体 / シッフ塩基 / 水素結合 |
Research Abstract |
本研究では、スピンクロスオーバー(SCO)現象を示す鉄(II)qsal系錯体に対して、種々の置換基導入などの化学修飾を行い、転移温度の高温化と共に、導電性や光スイッチング機能の発現を目指すものである。 23年度はカルボキシル基を有する鉄(II)qsal錯体[Fe(qsal-5c)2]において、水素結合による2次元的なネットワーク構造を形成しており、21Kと大きなヒステリシスを有し、かつ急峻な転移を135Kで示すことを見出した。24年度はその置換基の効果を明らかにするために、カルボキシル基の置換位置の異なるqsal-4cや、水酸基を有するqsal-nOH系(置換位置によりn = 3,4,5がある)において、構造と磁性を明らかにした。その結果、n = 5以外ではqsal-5cで見られたような2量体を形成する水素結合は形成されておらずSCO特性を示さないことが明らかとなった。また、n = 5においても、水素結合による1次元的な鎖状構造が確認できたが、SCO特性を示さないことがわかった。また、qsal-5c系における同位体効果も明らかにした。一方、フェナジン骨格をベースにしたS字型6座配位子から得られる3核錯体については、鉄以外にも、マンガンやコバルトの2価金属イオンでも類似の構造が得られることがわかった。これらの磁性の解析および、立体障害のない別のS字型6座配位子による鉄錯体については次年度以降の検討課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
水酸基を有するqsal-nOH系で、いずれもSCO特性は示さなかったものの、これらの錯体の構造解析に成功している。これは研究の展開を図る上で有力な手がかりとなるものである。よって、本研究は概ね計画通り順調に推移していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
高いSCO転移温度を有するqnal系および、qsal-5c系において、ヒステリシス幅内での光照射によるスピン転移挙動について研究を進める予定である。3核錯体の磁性の解析および、立体障害のない別のS字型6座配位子による鉄錯体についても検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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