2011 Fiscal Year Research-status Report
フラグメント集合方式によるレセプター型味覚センサーの開発
Project/Area Number |
23550171
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
林 宣之 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品総合研究所食品分析研究領域, 主任研究員 (40294441)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 分子認識 / 味覚センサー |
Research Abstract |
レセプター分子構造を有する味覚センサーをフラグメント集合方式に基づいて開発する方法論を確立するにあたって、当該年度は、センシングの標的分子に対するフラグメント構造へ分割する以前のレセプター分子の複合体形成能力を、NMR滴定法を用いて結合定数を算出し、定量的に評価した。標的となる味物質としては、苦味を呈するメチルキサンチン類とその構造類似体について検討を行った。 レセプター分子がメチルキサンチン類との間の主要な分子間相互作用として非極性相互作用が効率的に利用できるように、その基本骨格は種々の芳香環によって構成する計画とした。将来的なフラグメント構造への分割を考慮し、それらの芳香環構造は幾つかのパートに分割された。各パートは合成操作が容易で比較的反応収率が高い官能基により連結できるようにした。さらに、これらのレセプター分子に適度な水溶性を持たせるために、その分子内に幾つかの親水性官能基を配置するように分子設計を行った。 以上の方針に基づき、新規化合物3種類を含むレセプター分子6種類を合成した。それらのレセプター分子に対して、メチルキサンチン類およびその類縁体7種類を用いて複合体形成能力を調べたところ、新たに合成された新規化合物の中に、メチルキサンチン類に対して相対的に大きな結合定数を有するものが見出され、目的に合致した苦味センシングレセプターの化学構造候補を絞り込むことができた。さらに、非極性相互作用と親水性官能基の数と配向関係がこれらの複合体形成に及ぼす影響に関し、解明すべき課題も見出されたことは、今後の分子設計の立案にとって重要な成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、苦味を呈するメチルキサンチン類に対して優先的に複合体を形成する人工レセプター分子を合成することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、平成23年度に引き続き、合成されたレセプター分子と苦味物質との親和性の評価を行い、苦味物質のセンシングに対して適切なレセプターの分子構造を解明する。この分子構造をフラグメント構造に分割し、金薄膜上へ固定するための結合部を有するフラグメント分子の合成を開始する。 電解性の味物質に関しては、うま味を呈する化合物のセンシングに必要なレセプター分子構造の解明に着手する。非電解物質の場合と同様に、レセプター分子構造の設計・合成を行い、レセプター分子とホスト分子(うま味物質)の親和性をNMRによって評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究課題の推進のため、次年度の研究費は、交付申請時の計画通り、物品費、謝金、その他に使用する。なお、次年度使用額523,163円は、今年度内に研究代表者の異動があったため、研究環境の整備に時間を要し、予定していた研究時間の全てを確保できなかったことと研究費を効率的に使用して発生した残額であり、今年度の研究において新たに見出された課題の解明を目指し、次年度に請求する研究費と合わせて研究遂行のために使用する。
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