2011 Fiscal Year Research-status Report
重合誘起相分離を利用した高性能固定化Pdナノ触媒の創製
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23550172
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Research Institution | Kawamura Institute of Chemical Research |
Principal Investigator |
加藤 愼治 一般財団法人川村理化学研究所, 高分子化学研究室, 室長 (10415458)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | Pd触媒 / 多孔性ポリマー / 重合誘起相分離 |
Research Abstract |
1. PdNPs/リガンド複合体形成の機構およびその構造の解明 3級アミノ基およびウレア結合を各1個併せ持つメタクリレート分子をリガンド部位含有低分子モノマーとして用い、重合誘起相分離(PIPS)によりPdナノ粒子(PdNPs)担持多孔性ポリマーを調製した。構造を形成する架橋性モノマーとして、種々重合基間のメチレンスペーサ長の異なるジメタクリレート(C2,C4,C6,C9)を用いて検討した結果、いずれの場合も小粒径PdNPsが担持された多孔性ポリマーの形成が確認された。TEM-EELS測定より、集積化されたリガンド部位によりPdNPsが安定化された様子が明確に観測された。これらの結果より、ダイナミックなPIPSプロセスにおいて、Pd2+イオンからPd0へと還元反応が進行する中、Pd成分が「アセンブラー」として機能して低分子リガンドモノマーが集積化されたことが示唆される。2. PdNPs担持多孔性ポリマーフィルムを利用したハイスループット触媒システムの創製 架橋性モノマー、低分子リガンドモノマー、およびPd塩を用い、PIPSによりPdNPs担持多孔性ポリマーフィルムの調製を試みた。まず、バルクでの熱重合PIPSに用いたモノマー組成物を用いた場合は、ポリマー/溶媒の相分離が進行せず多孔性フィルムの形成が困難であることが確認された。そこで、モノマー組成物に可溶性ポリマーを加えた場合、熱力学的な不安定要素が導入されることにより、相分離状態の形成、およびそれに付随した多孔性フィルムの形成が可能であることを見いだした。ここでも、TEM-EELS測定より、PIPSにともなう低分子リガンドの集積化が明確に確認された。このようにして得たPdNPs担持多孔性ポリマーフィルムは、水系クロスカップリング反応に対して、Pd漏出がきわめて低い高活性固定化触媒として機能することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)PdNPs/リガンド複合体形成の機構およびその構造の解明平成23年度目標であった、PIPSプロセスにおけるPd還元反応に付随した、低分子リガンドの集積化が明確に見いだされた。(2)PdNPs担持多孔性ポリマーフィルムを利用したハイスループット触媒システムの創製PIPSのタイムスケールをUV重合のそれにマッチさせることを実現し、PdNPs担持多孔性ポリマーフィルムの形成に成功した。それに付随したPIPS条件の検討を通して、平成23年度目標であった高耐久性、高活性フィルム触媒の創製を実現した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)PdNPs/リガンド複合体形成の機構およびその構造の解明ポリマーネットワークの網目構造(架橋点間距離、架橋点間のスペーサ構造)は、用いる架橋性モノマーの化学構造で一次的に決定される。また、架橋性モノマーの化学構造は重合相分離プロセスに影響を与え、ひいては、形成する多孔性ポリマーの微細構造(比表面積、細孔径、細孔体積、等)に影響を与える。平成24年度以降は、本PdNPs担持多孔性ポリマーシステムにおける担体微細構造・リガンドの集積化構造と触媒活性・Pd保持特性について考察を加えるべく、検討を進める。(2)PdNPs担持多孔性ポリマーフィルムを利用したハイスループット触媒システムの創製PdNPs担持多孔性ポリマーフィルムの触媒としての構造最適化を行うとともに、フォトリソグラフィによる逐次積層型マイクロチャネル(mc)の作製に取り組む。上記のPdNPs担持多孔性ポリマーフィルムをチャネル固定床(ボトム)として組み込んだmcリアクタを用い、高活性ハイスループット触媒システムの創製を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用予定の研究費(147円)および次年度請求予定の研究費を併せ、研究課題遂行に必要な物品費(試薬、備品等)に600,147円、研究成果の公表および関連分野の研究者との議論のために参加する学会等への旅費に150,000円、およびその他50,000円を使用する予定である。
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