2012 Fiscal Year Research-status Report
重合誘起相分離を利用した高性能固定化Pdナノ触媒の創製
Project/Area Number |
23550172
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Research Institution | 一般財団法人川村理化学研究所 |
Principal Investigator |
加藤 愼治 一般財団法人川村理化学研究所, 高分子化学研究室, 室長 (10415458)
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Keywords | Pd触媒 / 多孔性ポリマー / 重合誘起相分離 |
Research Abstract |
(1)PdNPs/リガンド複合体形成の機構およびその構造の解明 3級アミノ基、ウレア結合、およびアミド結合をそれぞれ任意の個数併せ持つメタクリレート分子を種々合成し、それをリガンド部位含有モノマーとして用い、重合誘起相分離(PIPS)によりPdナノ粒子(PdNPs)担持多孔性ポリマーを調製した。低分子性モノマーであっても、分子中に複数個(3個以上)のリガンド部位を有する場合、高次のポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマー(第4世代)に重合性部位を導入して調製したリガンドモノマーと同様、得られるPdNPsのサイズ制御および触媒反応におけるPdリーチングの抑制に効果があることが見いだされた。TEM-EELS測定より、集積化されたリガンド部位によりPdNPsが安定化された様子が観測された。これらの結果より、PIPSプロセスにおいて、Pd2+イオンからPd0へと還元反応が進行する中、Pd成分が「アセンブラー」として機能して低分子リガンドモノマーが集積化されたことが示唆される。 (2)PdNPs担持多孔性ポリマーフィルムを利用したハイスループット触媒システムの創製 架橋性モノマー、リガンド部位含有モノマー、およびPd塩を溶媒に溶解させ、そこに可溶性ポリマーを添加することにより、UV光照射によるPIPS過程を経て、PdNPs担持多孔性ポリマーフィルムを形成した。溶媒として低揮発性・低極性モノマー(例えば、デカン酸メチル)を用いることにより、表面多孔性に優れたフィルムの形成が可能となり、触媒反応の際、ポリマー内に担持されたPdNPs近傍への反応基質のアクセスが促進された。その結果、得られたPdNPs担持ポリマーフィルムは、水系クロスカップリング反応に対して、Pdリーチングを伴わず、かつターンオーバー数 >1,000,000のきわめて高活性な固定化触媒として機能することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)PdNPs/リガンド複合体形成の機構およびその構造の解明 平成24年度目標であった、PdNPs担持多孔性ポリマーシステムにおけるリガンドの集積化構造と触媒活性・Pd保持特性の相関性解明について、大きく理解が深まった。 (2)PdNPs担持多孔性ポリマーフィルムを利用したハイスループット触媒システムの創製 フィルムシステムにおけるPIPS挙動を精査することにより、表面多孔性に優れたPdNPs担持ポリマーフィルムの形成に成功し、平成24年度目標であったフィルム触媒のさらなる高耐久性化・高活性化に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)PdNPs/リガンド複合体形成の機構およびその構造の解明 ポリマー担体の微細構造(比表面積、細孔径、細孔体積、ポリマファイバー径、等)は、用いる架橋性モノマーの化学構造、架橋性モノマー/単官能性モノマー比率、溶媒の化学的・物理的性質によって劇的に変化する。平成25年度は、PdNPs担持多孔性ポリマーシステムにおける担体微細構造・リガンドの集積化構造と触媒活性・Pd保持特性についてさらに考察を加えるべく検討を進め、本採択研究の完遂を目指す。 (2)PdNPs担持多孔性ポリマーフィルムを利用したハイスループット触媒システムの創製 PdNPs担持多孔性ポリマーフィルムの触媒としての構造最適化に取り組み、触媒反応におけるインターフェースとしてのフィルム表面微細構造(多孔性・凹凸性)と溶媒とのぬれ性および触媒活性との相関性について考察を深める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用予定の研究費(11,869円)および次年度請求予定の研究費を合わせ、研究課題遂行に必要な物品費(試薬、備品等)に1,011,869円、研究成果の公表および関連分野の研究者との議論のために参加する学会等への旅費に150,000円、およびその他50,000円を使用する予定である。
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