2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23550175
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中田 耕 北海道大学, 地球環境科学研究科(研究院), 助教 (90250414)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 硝酸 / 還元 / 電気化学 / 赤外 / 表面増強 / 貴金属 / ロジウム / 白金 |
Research Abstract |
本研究では,種々の疾病の原因となる飲料水中の硝酸イオンを電気化学的に還元して無害化する電極を設計するために,電気化学的測定と連動した表面増強赤外分光法によって,貴金属電極(白金,パラジウム,ロジウム,イリジウム,ルテニウム)およびそれらのスズ修飾電極での硝酸イオンの吸着状態,電位による吸着量の変化,特にスズが誘起する還元されやすい吸着状態はどのようなものであるかを分析,解明し,これらの知見を基に新たな機能性電極を設計することを目的としている.さらに,より実用性の高い膜電極を用いたシステムへ応用を図ることについても考慮している. 平成23年度は主として,電気化学的測定と連動した表面増強赤外吸収スペクトルの測定から,貴金属電極(パラジウム,白金,ロジウム)およびそれらのスズ修飾電極を用いて硝酸イオンの吸着状態に関する知見を得た.また,硝酸イオン還元触媒として有効な銅修飾パラジウム,スズ修飾パラジウム電極のN-O結合解裂能力と白金の水素化能力の兼備を期待したパラジウムー白金の合金についても研究対象とした. 既に報告したように白金ではbidentate型に吸着した硝酸イオンのバンドが現れるが,パラジウムでは明確なバンドは出現しなかった.平面型の構造をとる硝酸イオンはパラジウム表面と平行に吸着していることが予想される.また,パラジウムー白金の合金では,白金と同様にbidentate型の硝酸イオンのバンドが現れ,パラジウム/白金比の増大に伴ってバンド位置は高波数側に移動することがわかった.また,これらの電極ではスズを修飾してもバンド位置の変化は小さいことがわかった.ロジウム電極では,硝酸イオンの添加によってbidentate型に吸着した硝酸イオンのバンドの他にunidentate型に吸着した硝酸イオン,硝酸イオンの還元生成物であるNOと考えられるバンドも出現した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年度の主な目標は,電気化学的測定と連動した表面増強赤外吸収スペクトルの測定から,貴金属電極およびそれらのスズ修飾電極を用いて硝酸イオンの吸着状態に関する知見を得ることである.これまでの知見から,スズ修飾パラジウムおよびスズ修飾白金電極では硝酸イオン還元に対して高い活性を示すが,スズ修飾ロジウム電極では活性は低いことがすでに明らかにされている.これらの結果に基づいて,パラジウム,白金,パラジウムー白金の合金,ロジウムおよびそれらのスズ修飾電極を用いた赤外吸収スペクトルの測定から,当初の予想通り貴金属電極表面に吸着した硝酸イオンは,貴金属の種類によって吸着様式に違いがあることがわかった.また,スズ修飾および銅修飾パラジウム電極では,硝酸イオンの還元によるNOのバンドが観測された.これらの電極については,硝酸イオンに加えて,亜硝酸,NOを用いて,吸着状態の検討を行った.これらの研究結果について,5件の学会発表(国内の学会:4件,国際学会:1件)を行った.現在,パラジウムー白金の合金電極,ロジウム電極の結果をまとめて,学会誌への投稿論文を執筆中である.これらの点については,平成23年度の目標は概ね達成されたと言える.しかし,スズ修飾電極とスズを修飾していない電極の赤外吸収スペクトルを比較した場合,出現した硝酸イオンのバンド位置に大きな違いはなく,貴金属表面をスズによって修飾することよる硝酸イオン還元活性の向上と赤外吸収スペクトルで出現するバンドの関連が解決されていない.さらなるデータの蓄積,系統的な理解と他の測定法の併用等の新規なアイディアの必要性を感じる.
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の研究結果から,赤外吸収スペクトルの測定結果によって貴金属電極の種類によって硝酸イオンの吸着状態に大きな違いがあることが明らかとなった.硝酸イオンの吸着状態と還元活性との関係,硝酸イオンの吸着状態と還元生成物の選択性の関係を明らかにする.硝酸イオンの還元では,還元の活性度(作用電極単位面積当たりの電流値)は,作用電極の種類に大きく依存している.これと同様に,電気分解による還元生成物もまた作用電極の種類に大きく依存している.本年度は赤外分光法によって得られた硝酸イオンの吸着状態の電位依存性,電位による吸着量の変化から,これら作用電極による生成物の違いの要因を明らかにする.また,電解と赤外分光法の同時測定から,電解中の電極表面吸着種の情報を得る.さらに,活性と窒素選択性の両方の観点から,硝酸イオン還元に適した電極界面を設計する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度の研究費の入金が遅かったことに加えて,平成23年度に購入した電気化学測定システムの値引きが予想以上であったため研究費を使い切ることができず,465,659円の残金が発生した.この残金については,本研究で使用する特殊な形状のガラス器具(セル,溶液交換に用いるためのサーバー容器)の製作費,電極作製用の金,白金,ロジウム等の貴金属試薬の購入費として使用する予定である.
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