2011 Fiscal Year Research-status Report
カーボンナノキャビティを反応場とする物質変換プロセスの開拓
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23550178
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
岩松 将一 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (60345866)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ナノカーボン / 機能性触媒 / ホスト材料 |
Research Abstract |
本研究は、カーボンナノキャビティ分子をナノリアクター、触媒とする物質変換プロセスの開発を目的とするものである。より具体的には、フラーレンC60に高次の有機化学修飾を施すことによって得られるカーボンナノキャビティ分子の (1) 単一分子吸蔵特性、(2) 外部表面の特異的反応性に着目し、ナノカーボンを用いた新たな物質変換反応を開拓することを目的としている。研究初年度にあたる平成23年度は、適用可能な化学反応の探索実験を実施した。 (1) の単一分子吸蔵特性を利用した反応については、水分子を内包したキャビティ分子を用いて、酸素雰囲気下での光照射実験や過酸化水素添加実験等を実施した。いずれの実験においてもこれまでのところ、キャビティ内部の水分子に変化は確認されておらず、引き続き照射光の波長域や活性種の捕捉剤を変えて実験を行うとともに、水・酸素以外の小分子の活用について実験を着手した段階である。 (2) のナノキャビティ表面、エッジ部分の特異的反応性を利用する物質変換反応については、主として12員環の開口部を有するキャビティ分子を用いて実験を行った。当初ヒドロシラン類を用いた物質変換反応を中心に検討を行ったが、キャビティ分子による活性化を示す実験データは得られなかった。次いでリンイリド、アミン類を用いた一部反応においてキャビティ分子そのものの構造変化が認められたものの、いずれの場合も期待した構造変化ではなく、本研究の目的である物質変換触媒としての機能発現には現在のところ至っていない。得られた生成物の構造決定とともに、対象となる反応を拡張して引き続き検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画時、初年度にスクリーニングを実施して候補となる反応を絞り、次年度以降、高性能化、既存触媒との差別化を図る予定であったことを考えると、進捗は遅れており、達成度も低いと言わざると得ない。キャビティ分子そのものの構造変化は、スクリーニングの方向性(反応・条件の選択)に示唆を与えるきわめて重要な情報であるが、いずれの場合も生成物の構造決定が難航しており、有益な知見が得られないことが進捗が思わしくない理由として挙げられる。この構造決定が困難で時間を要するといった問題は、本研究で取扱うキャビティ分子合成当時からの懸案事項である。短期間での状況改善は限定的であることから、作業中の構造解析の一時中断、他の候補反応へのシフト等、研究年度を見越した時間的判断が必要となってきている。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度より実施している反応探索実験を継続して行うが、(1) の単一分子吸蔵特性を利用した反応については、水・酸素以外の小分子、(2) のナノキャビティ表面、特にエッジ部分の特異的反応性を利用する反応については、キャビティ分子の選択、窒素系反応剤、ならびにその捕捉剤の組み合わせに重点を置いて実験を行う。 また、上記達成度の項で述べたように当初期待した成果がここまで得られていないことから、キャビティ分子の分子設計修正、ならびに合成にも着手する。反応基質がキャビティの吸蔵・排出口に固定され、局所濃度が上昇するような分子設計を行うと同時に、生成物の構造決定が難航し進捗上の問題となっていることから、ハロゲン導入など、解析の容易さも考慮に入れ、合成を検討する。 上記の反応探索実験の継続、キャビティ分子の分子設計修正を行った上でなお触媒としての機能発現が認められない場合は、既存触媒系へのキャビティ分子添加、複合化による機能分離型物質変換触媒システムの開発に着手する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度同様、実験に必要な薬品、溶媒、ガラス器具といった消耗品の購入に研究費の大部分を充てる。ナノキャビティ分子合成に必要な原材料 C60 は依然高価であるが (9千円/g)、本年度も20~25g (約20万円) の購入を予定する。5g 規模の合成に目途がたったことから原料の一括合成による研究の効率化を図る。ガラス器具は、フラスコ・シュレンク管など、有機合成化学実験で一般に用いられるガラス器具の不足分を追加購入する他、実験に必要が生じているガラス器具を一部特注で作成予定である。 旅費については、国内学会における成果発表 (日本化学会)を一回予定する。謝金を必要とする雇用は行わない。他、研究成果の論文投稿費用、情報収集のためのデータベース使用料をその他の費目として計上する。
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Research Products
(1 results)