2012 Fiscal Year Research-status Report
カーボンナノキャビティを反応場とする物質変換プロセスの開拓
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23550178
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
岩松 将一 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (60345866)
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Keywords | ナノカーボン / 物質変換触媒 |
Research Abstract |
本研究は、ナノカーボンを原材料としたキャビティ分子をナノリアクター、触媒とする物質変換プロセスの開発を目的とするものである。より具体的には、フラーレンC60に高次の有機化学修飾を施すことによって得られる炭素系キャビティ分子の (1) 単一分子吸蔵特性、(2) 外部表面の特異的反応性に着目し、ナノカーボンを用いた新たな物質変換反応の開拓を目的とするものである。 (1) の単一分子吸蔵特性を活用した反応については、平成23年度 (初年度)、水分子を内包したキャビティ分子を用いて、酸素雰囲気下での実験や過酸化水素添加実験を実施した。初年度の結果を踏まえ、本年度は、可視光、紫外光を区別した光照射装置を用いて実験を実施した。これまでのところ、キャビティ分子、および内部水分子ともに変化は確認されておらず、目的とする小分子活性化は達成されていない。直接観測困難とも推計される実験結果であることから、引き続き捕捉剤を添加した実験を実施中である。この他、光照射条件下における反応性に関する知見を得るために、キャビティ分子を光増感剤とした既知の一重項酸素酸化反応を実施し、キャビティ分子も原材料であるフラーレン同様、光増感作用を有すること、ならびに低活性ながら可視光照射下でも反応が進行することを確認した。 (2) のキャビティ分子表面、特にオリフィス部分の特異的反応性を利用する物質変換反応については、初年度の実験において、リンイリド、アミン類を用いた反応においてキャビティ分子そのものの構造変化が認められたことから、生成物の構造決定を進めているが、最終的な構造決定には至っていない。また、活性種捕捉剤として末端アルキンを添加した実験を新たに実施したが、物質変換触媒としての機能発現には現在のところ至っていない。上記(1)と関連して、水和反応など反応探索範囲を拡張して研究を継続中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画当初、初年度に反応探索を実施して候補となる反応を絞り、本年度以降、高性能化、既存触媒との差別化を図る予定であったことを考えると、進捗は遅れており、達成度も低いと言わざると得ない。キャビティ分子の構造変化は、反応探索の方向性(反応・条件の選択)に示唆を与えるきわめて重要な情報であるが、いずれの場合も構造決定が難航しており、有益な知見が思うように得られないことが進捗が思わしくない理由の一つとして挙げられる。構造決定の難航は、研究立案時より予見されたことであり、研究期間も3年間と長くないことから、NMR など正確な構造決定は今後の課題として保留し、質量分析など最小限の情報を反応探索にフィードバックさせるなど、実施体制は改めている。過去二年間の研究により、光照射実験など評価方法については確立しつつあるので、最終年度となる次年度は残期間を踏まえた実験を実施し、研究をまとめる。
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Strategy for Future Research Activity |
上記概要・達成度の項で述べたように、当初計画通り触媒機能が発現しない一因として、適切な反応選択の他に、(1)キャビティ分子の高反応性、(2)同オリフィス部位の柔軟性、(3)活性種として機能することを期待した構造の安定性など、キャビティ分子の設計上の問題も考えられる。このため、既存キャビティ分子を用いた反応探索と並行して、オリフィス部位の構造変換に着手するとともに、溶解性の観点から導入しているエステル置換基をもたないキャビティ分子の合成も新たに検討しているところである。 キャビティ分子の設計修正、反応探索実験を行った上でなお触媒としての機能発現が認められない場合は、当初の計画通り、既存触媒系へのキャビティ分子添加、複合化による機能分離型物質変換触媒システムの開発に着手する。複合システム構築の候補化合物として、適度な溶解性と可逆的構造変化特性を有する複素環化合物を設計し、現在合成中である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究の進捗が思わしくないこと、ならびに平成24年度に当初計画外の実験装置更新の必要が生じ(バキュームコントローラー、\504,000、主要な物品明細書の項参照)、消耗品購入費用を大幅に削減せざるを得なかったことから、最終年度も、実験に必要な薬品、溶媒、ガラス器具といった消耗品の購入に研究費の大部分を充てる。当初計画の学会における成果発表については、海外の国際学会分を見合わせ、国内学会分は必要が生じた場合他で充当する。謝金を必要とする雇用は当初の予定通り行わない。この他、研究成果の論文投稿費用、情報収集のためのデータベース使用料をその他の費目として計上する。
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Research Products
(1 results)