2013 Fiscal Year Research-status Report
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23550180
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西田 幸次 京都大学, 化学研究所, 准教授 (80189290)
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Keywords | メチルセルロース / ゲル化 / 会合誘起相分離 |
Research Abstract |
代表的な水溶性のセルロース誘導体であるメチルセルロース(MC)は、本来は水に不溶のセルロースの水酸基の一部をメチルエーテル化することでセルロースの分子内や分子間の水素結合の力を弱め、水に可溶化したものである。その水溶液は、60~70℃付近への加熱することにより、ゲル化や相分離(白濁)などの転移現象が協奏的に起こる下部臨界完溶(LCST)型の挙動を示す。すなわち、「室温」は、MC水溶液にとって従来安定一相(透明)領域と考えられてきた。実際、MC水溶液を室温(20℃付近)で数日間放置しても白濁や沈殿などを生じることなく、巨視的には透明で一相状態が保たれている。 しかし、試料溶液調整後の昇温実験開始までの室温での保存時間に応じてその後の相分離挙動に有意の差が生じるという事実を偶然見いだした。このことを発端に、MC水溶液が従来考えられていたLCST温度以下の室温においても理想的な均一一相状態には非ず、微視的スケールで何らかの構造を形成しているのではないかと推察するに至った。 そこで、微視的スケールでの構造形成を敏感に観察することができる動的光散乱法による実験を行った。動的光散乱実験の結果は、以下のように上述の推察を支持するものであった。室温での保存開始の初期においては個々のMC分子が孤立した状態にあることを示す単一の拡散現象を示すシグナルが優位に観測されたが、保持時間が増加するにつれて幾つかのMC分子が会合したことによる遅い拡散現象を示すシグナルが強く観測されるようになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要で述べたように、MC水溶液の従来考えられていたLCST温度以下の室温における未解明の現象に関して、動的光散乱法による実験を行い、微視的スケールでの会合が進行していることを示す有力な結果が得られた。これらの結果を定量的に解析し、国内外のシンポジウムおよび論文として成果発表する予定であった。一方、別の分野(水溶液ではなく、高分子固体の結晶化)の研究で特定国派遣研究者に採択され、平成25年9月1日から10月20日までの50日間ドイツのロストック大学にて「高速の温度変化による高分子材料の高次構造制御」の研究に専念した。このような事情から本基盤研究(C)の研究計画に遅れが生じてしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画した実験の主な部分は遂行済みであり、現在は、実験結果を用いて定量的な解析を行っている段階である。解析の段階で追加実験の必要が生じた場合も主な道具立ては前年度までの実験で準備したものを用いることができる。得られた成果は、国際シンポジウムと論文での発表の予定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
微視的会合体の構造やその形成のメカニズムを明らかにすべく、光散乱実験を行い、国内外のシンポジウムで成果発表する予定であった。一方、別の分野の研究で特定国派遣研究者に採択され、平成25年9月1日から10月20日までの50日間ドイツのロストック大学にて「高速の温度変化による高分子材料の高次構造制御」の研究に専念した。このような事情から本基盤研究(C)の研究計画に遅れが生じてしまい未使用額が生じた。 上記計画の未遂行分は、若干の追加実験、国際シンポジウムおよび論文による成果発表である。未使用額はその経費に充てることとしたい。
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Research Products
(2 results)