2011 Fiscal Year Research-status Report
環境志向型光学活性ハイブリッド錯体の多機能発現メカニズムの解明と応用
Project/Area Number |
23550181
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
米村 俊昭 高知大学, 教育研究部総合科学系, 教授 (90240382)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小澤 智宏 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70270999)
上田 忠治 高知大学, 教育研究部総合科学系, 准教授 (50294822)
松本 健司 高知大学, 教育研究部総合科学系, 助教 (30398713)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 環境対応 / 複合材料・物性 / 合成化学 / イオン結晶 / 光学活性 / ハイブリッド化合物 |
Research Abstract |
今回のテーマは,光学活性を有する環境応答性金属錯体の開発を目指し,酸化還元能を特定の部位に,いかに効率よくキラル反転反応を誘起するかについて,分子レベルで設計,合成するとともに,そのシステムを用いた機能発現に焦点をあてる。本研究では,組織化反応を行う上で有用となる16族元素として硫黄および酸素原子を含む二あるいは三座配位が可能な配位子を用い,単核錯体を原料とした異種の金属あるいは金属錯体との間で形成される多核錯体の立体選択的合成を試みることとした。 研究初年度として,配位子としては光学活性な錯体を合成できること及び溶液中で分子内あるいは分子間の水素結合が形成可能なメルカプト酢酸,メルカプトプロピオン酸に加えて,L-システイン,および,L-システインメチルエステル(L-cysMe),L-システインエチルエステル(L-cysEt)を用いた。錯体の合成は,反応物質およびpHや温度等の反応条件を詳細に検討し,立体特異的な集積型多核錯体の合成法についての検討を行った。単離した化合物は,NMRスペクトルおよび元素分析等に基づいて構造決定を行った。さらに,それらの可視-紫外吸収・赤外吸収スペクトルやマススペクトル等を測定することにより,立体化学的,電気化学的,分光化学的性質について検討した。次に,得られた単核錯体と銀あるいはコバルトイオンまたはコバルト(III)錯体を反応させることによって、五核あるいは三核錯体を合成した。UV-Vis吸収,CDスペクトルのデータから,これらの多核化反応は,用いるイオンや錯体の種類によって単核ユニットの絶対配置がΔΔまたはΛΛの多核錯体を形成することがわかった。興味深いことに,L-cysEt錯体と,L-cysMe錯体とでは, 生成物のCDスペクトルが対掌的になっており,絶対配置が異なっていると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度として,新規なハイブリッド錯体の立体選択的に合成する方法を見出すことができた。反応物質およびpHや温度等の反応条件を詳細に検討し,立体特異的な集積型多核錯体の合成法についての有用な知見を得ることができ,日本化学会の春季年会や西日本大会等で発表した。 単離した化合物は,NMRスペクトルおよび可視-紫外吸収・赤外吸収スペクトルやマススペクトルに基づいて構造決定を行い,これまでのデータと比較することにより不斉制御反応に関して新たな知見を得ることができた。 次年度には,この五核あるいは三核錯体でみられた特異的な不斉誘導反応について,キラリティの判定をより簡潔にできる二核錯体を用いて詳細な検討を行っていく。
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Strategy for Future Research Activity |
多核錯体形成時における電子移動と立体特異性との関連について明らかにすることを目的として,種々の反応場における立体特異的な合成を検討し,合成法を確立する。前年度の研究成果をもとに,キラル反転メカニズムの解明の手がかりを得る。さらに,多核化過程あるいは生成した多核錯体について,反応場が立体選択性に及ぼす影響に注目しながら,反応結果を詳細に考察する。さらに,キセノン光源を使用した光誘起不斉反応についても検討し,不斉反転がどのような波長領域で起こるかについても検討する。 一連の試験研究に基づいて,種々のチオラト配位子を用いて一分子中に銀および銅・亜鉛・コバルトイオンなどの複数の金属中心を有する多核金属化合物の抗菌・防かび性について,最小発育阻止濃度(MIC)法等により抗菌-防かび剤としての有効性のレベルを評価する。抗菌-防かび性にどのような要因が大きく寄与するかについて,不斉を含む立体構造や電子状態などに注目して系統的に検討し,有機配位子や錯体の分子設計にフィードバックする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
【当該研究費が生じた状況】 平成23年度の計画に基づく経費執行において,次年度使用額が多く存在するように見えるが,一部4月に支払いすべき経費が残っているために,実際の繰越額は多くない。研究費に残額が生じた主な理由は,2名の研究分担者が長期(1-2ヶ月)の外国出張を行ったために,配位子合成やスペクトル測定の一部を次年度に行う必要が生じたことによるものである。【平成24年度請求の研究費と遭わせた使用計画】 次年度には上記の点を補い,研究の進捗状況を考慮しながら,当初の予定に沿った使用を予定している。
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