2012 Fiscal Year Research-status Report
海水中で使用できる新規分解性両親媒性化合物の創製と機能に関する研究
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23550184
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Research Institution | 地方独立行政法人大阪市立工業研究所 |
Principal Investigator |
小野 大助 地方独立行政法人大阪市立工業研究所, その他部局等, 研究員 (30416317)
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Keywords | 両親媒性化合物 / 界面活性剤 / 化学分解性 / 二疎水鎖型 / 海水 / 非イオン / 糖 |
Research Abstract |
これまで研究を行ってきた化学分解機能を付与した新しい両親媒性化合物は、分解性連結部(アセタール基、1,3-ジオキソラン環、エステル基など)を分子内に導入していることからそのままでも微生物による生分解性がいいことも判明している。そのなかでも海水(ミネラル、塩を含む水)中で、良好な界面物性が保持できる分解性両親媒性化合物を創製することができれば、海洋事故などに使用する際、環境負荷の低減が期待できる。 そこで、親水基には糖などの天然物を有する海水中で使用できる分解性非イオン両親媒性化合物の創製とその機能に関する研究を行った。今年度は、1,3-ジオキソラン環を有しない新規両親媒性化合物を合成し、その界面物性を測定した。 まず、果実などの各種植物中に遊離酸または塩として存在する酒石酸ジエチルとヨードオクタンをDMF中で水素化ナトリウムを加えて、アルキル化することによりエステル型中間体を合成した。その中間体とショ糖を炭酸カリウム存在下、DMF中でエステル交換することにより、糖由来の化学分解性界面活性剤を合成した。反応終了後、中性シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製を行った。 これらの曇点は90℃以上となり、市販ショ糖脂肪酸エステルと同様の結果となった。表面張力低下能は30 mN m-1以下となり、非常に低い値となった。起泡力、泡安定性は、市販ショ糖脂肪酸エステルよりも良い結果となった。大豆油を用いた乳化力は、市販ショ糖脂肪酸エステルに比べ若干優れていた。人工海水中では、cmc、表面張力低下能ともに市販ショ糖脂肪酸エステルよりも優れていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、1,3-ジオキソラン環を有しない新規両親媒性化合物を合成するにあたり、中間体と目的物の最適反応条件を確立し、目的物の化学分解性両親媒性化合物が得られることを見出した。 その後、純水中、人工海水中での種々の界面物性を対照両親媒性化合物と比較し、同等以上であることを明らかにした。特に、人工海水中でのcmc、表面張力低下能は対照両親媒性化合物よりも良好であった。 よって本年度の研究計画はおおむね達成することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに合成した1,3-ジオキソラン環を有する分解性非イオン両親媒性化合物と1,3-ジオキソラン環を有しない分解性非イオン両親媒性化合物の応用実験を行う。まず、微生物による活性汚泥を用い生分解性試験を両親媒性化合物単体や油分散系などいろいろな系で行う。さらに、実際の使用に関して重油などの分散・乳化力も検討する(MDPC法、船査第52号法)。その際、ショ糖脂肪酸エステルや市販の分散剤と比較する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
重油を混合した溶液の生分解性を評価する際、使用後の培養ビンから完全に重油を洗浄・除去するのは非常に困難であることから、多くの培養ビンが必要である。本研究の成果は、学会発表や学会誌等に投稿する。さらに、講演会やポスター発表を行っていく。その際に、学会発表登録料、旅費やその準備のための経費が必要となる。また、論文発表の英文校閲費、投稿費などで使用する。
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