2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23550186
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
松井 敏高 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (90323120)
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Keywords | ヘム代謝 / 酸素活性化 / 反応機構 / 結核菌 / 黄色ブドウ球菌 / ホルムアルデヒド |
Research Abstract |
最終年度は主にIsdG型ヘム分解酵素の反応機構について検討した。黄色ブドウ球菌のIsdGによる反応では、結核菌のIsdG型酵素(MhuD)と同様、COが発生しないことが示された。ポルフィリン環開裂部の炭素はホルムアルデヒドとして遊離していたことから、IsdG反応機構が従来型ヘム分解酵素(HO)とは大きく異なり、MhuDとは類似していることが示された。これらの結果、IsdG型ヘム分解酵素に共通するヘムの歪みが、その特殊なヘム分解機構の主因であると考えられた。 MhuDについては反応初段階における中間体の観測に成功し、共鳴ラマンによる解析の結果、酸素結合型ヘムと同定された。驚くべきことに、酸素の振動に由来するシグナルは他のヘムタンパク質と同様の位置に観測され、ヘム配位子は歪みの影響を受けにくいことが示された。よって、IsdG型酵素の特殊な反応性は、主に歪みによる立体配置の変化、または、ポルフィリン環側の状態変化に起因すると予想される。さらに過酸化水素によるヘム分解経路の発見などにより、IsdG型酵素の機構解明に向けた基礎的な情報を得ることができた。 数十年にわたるヘム分解酵素の研究において、自然界にはHO型の反応機構のみが存在すると考えられてきた。しかし今回のIsdG型酵素の研究により、病原性細菌における新たなヘム分解戦略の存在が明らかとなり、その生理学的な重要性も提案された。さらに前年までに、HO型酵素にも新反応が存在し、動物細胞内でも進行することを示した。これらの成果は「ヘム分解酵素研究のパラダイムシフト」を起こしたと高く評価されており、中でも2013年に発表したMhuD反応に関する研究は、J. Biol. Chem.誌の年度代表論文(Enzymology分野)に選出された。
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Research Products
(8 results)