2011 Fiscal Year Research-status Report
1ナノメートルの分子空間を活用した細菌膜傷害性抗菌ペプチドのモデル化研究
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23550191
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
山村 初雄 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80220440)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | シクロデキストリン / ペプチド / 抗菌 |
Research Abstract |
本研究では、細菌膜を傷害する天然抗菌ペプチドであるグラミシジンSをモデル化する。まずは細菌膜脂質と相互作用するアミノ基を持つシクロデキストリン誘導体についての研究を行った。グラミシジンSは0.5ナノメートルの距離で隔てられた2個のオルニチンを持ち、この上にプラス電荷を帯びるアミノ基が存在する。これをβシクロデキストリン上に再現することを研究した。7個のグルコースが円筒状につながったβシクロデキストリンには、その円筒構造の両側にグルコースの一級ヒドロキシ基7個が集まる部分と二級ヒドロキシ基14個が集まる部分がある。そのシクロデキストリン中の隣り合うグルコースの一級ヒドロキシ基の距離が0.5ナノメートルであることを利用した。二級ヒドロキシ基をメチル化したβシクロデキストリンの一級ヒドロキシ基を特異的に2個、スルホン酸エステル化した誘導体を得た。これは反応点を特定することで引き続く反応によってそこにオルニチン側鎖に相当するアミノプロピル基の導入を可能にする。さらにアミノ基距離の異なったシクロデキストリンを合成することを可能にするスルホン酸エステル化されたグルコースの位置が異なる誘導体の合成にも成功した。これらを用いれば分子上のアミノ基の距離と活性の関係を調べることができる。 さらにアミノ基を7個持つシクロデキストリンを合成するための一級ヒドロキシ基の活性化法を研究した。これは分子あたりの相互作用を増幅することで相互作用により生じる情報を大きくして顕著にアミノ基と脂質との相互作用を観測評価するためであり、これにより最適なアミノ基の検討がより容易となる。研究の結果、高収率かつ高効率での活性化法を確立できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
グラミシジンSは平面構造の中に0.5ナノメートルの距離で隔てられたプラス電荷を帯びるオルニチンを2個持つ。この構造は細菌膜脂質に近づいた際に脂質のリン酸部(マイナス電荷)と最初に相互作用する重要な意味を持ち、これをシクロデキストリン上に備え付けるための合成研究を行った。予定より時間を要したが、本年度に得られた誘導体を用いれば上記構造をシクロデキストリン上に再現することが可能となった。この成果を踏まえて、引き続き研究を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
抗菌ペプチドであるグラミシジンSは、その平面構造の表側にプラス電荷を帯びるアミノ基を持ち、裏側に疎水性基を持つ両親媒性である。本研究では糖質シクロデキストリン上に、(1)細菌膜に結合するためのアミノ基、(2)それと協同して細菌膜を乱す疎水性基、を合成で備え付け、細菌膜脂質との相互作用、膜傷害性および抗菌性のメカニズムを解明する情報を得ることを目的とする。本年度はアミノ基を導入する方法を研究した。今後は計画に従い、アミノ基と脂質との相互作用検討、アミノ基と疎水性基を持つシクロデキストリン誘導体合成とその脂質との相互作用解析、そしてそれらを踏まえたより高機能な誘導体へと研究を進行させる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は研究計画にしたがって研究費を使用した結果、1000円未満の「次年度に使用する予定の研究費」を生じた。これは研究に必要とした物品の合計額が当初計画の額よりわずかに少なかったためである。次年度の予算計画には大幅な影響を与えないとみなしうるので、次年度は研究計画にしたがって研究費を使用する。
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