2012 Fiscal Year Research-status Report
1ナノメートルの分子空間を活用した細菌膜傷害性抗菌ペプチドのモデル化研究
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23550191
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
山村 初雄 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80220440)
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Keywords | シクロデキストリン / ペプチド |
Research Abstract |
本研究では、細菌膜を傷害する天然抗菌ペプチドをモデル化する。本年度は細菌膜脂質と相互作用するアミノ基と疎水性基を併せ持つシクロデキストリン誘導体についての研究を行った。グラミシジンSはプラス電荷を帯びるアミノ基を持ち、これが負電荷を帯びた細菌膜状の脂質分子に相互作用する。7個のグルコースが円筒状につながったβシクロデキストリンには、その円筒構造の両側にグルコースの一級ヒドロキシ基7個が集まる部分と二級ヒドロキシ基14個が集まる部分がある。その一級ヒドロキシ基を活性化してアジド基に置換し、そこにクリック反応を利用してアミノ基を導入した。この際、マイクロ波照射を利用することで完了まで10分程度しか要さない高速での反応プロセスを確立した。また、ペプチドの主鎖とアミノ基は3個の炭素で隔てられており、その距離・自由度と活性の関係を調べるために炭素数が異なるアミノ基を3種合成した。まずはクリック反応の試薬として炭素数の異なる保護アミノアルキンを合成し、マイクロ波支援クリック反応を利用して該当するシクロデキストリン誘導体を合成した。そして疎水性基として二級ヒドロキシ基のすべてにアセチル基を導入することに成功した。ここで、グラミシジンSはプロピル基とブチル基の2種の疎水性基を持つ。グラミシジンSに代表されるシート型ペプチドは細菌膜を撹乱・傷害するためには親水性基(陽イオン性アミノ基)と疎水性基のバランスが重要であることが示唆されている。しかし、実際にどのようなバランスが細菌膜傷害に効果的かは、いまだ明確でない。上記で調製した異なる炭素数のアミノ基を持つ誘導体は、親水性基/疎水性基のバランスが異なるため、脂質膜との相互作用とその度合いを精査することで膜傷害の分子機構についての情報を得ることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
グラミシジンSは平面構造の中にプラス電荷を帯びるアミノプロピル鎖を持つオルニチン残基を2個、疎水性のイソプロピル基、イソブチル基を持つバリンおよびロイシン残基を2個ずつ含む。この構造は細菌膜脂質に近づいた際に、最初にマイナス電荷を持つリン酸部と、引き続いて、疎水性の脂肪酸部分と相互作用する重要な意味を持つ。そこでアミノ基と疎水性基をシクロデキストリン上に備え付けるための合成研究を行った。予定より時間を要したが、上記構造をシクロデキストリン上に再現した誘導体を得ることができ、膜との相互作用実験が可能となった。この成果を踏まえて、引き続き研究を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
抗菌ペプチドであるグラミシジンSは、その平面構造の表側にプラス電荷を帯びるアミノ基を持ち、裏側に疎水性基を持つ両親媒性である。本研究では糖質シクロデキストリン上に、(1)細菌膜に結合するためのアミノ基、(2)それと協同して細菌膜を乱す疎水性基、を合成で備え付け、細菌膜脂質との相互作用、膜傷害性および抗菌性のメカニズムを解明する情報を得ることを目的とする。これまでの成果によりアミノ基と疎水性基を持つシクロデキストリン誘導体を合成する方法は確立した。計画に従い、脂質との相互作用検討、そして天然ペプチドを凌駕するシクロデキストリン誘導体へと研究を進行させる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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