2012 Fiscal Year Research-status Report
ヘテロ二量化受容体が持つ二種類の結合部位から伝達される生理活性情報の識別
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23550194
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
兒玉 浩明 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80205418)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長田 聡史 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50284609)
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Keywords | シグナル伝達 / 生体分子 / 生理活性 / 活性酸素 / ダイマー |
Research Abstract |
白血球の主成分である好中球の細胞膜上に存在するFormylPeptideReceptor(FPR)は、細胞膜を7回貫通する構造を持つGタンパク質共役型受容体(GPCR)である。二量化受容体研究において、リガンドの二量化は有用なツールであり、リガンドのヘテロ二量体の合成を計画した。今回は、FPR1選択的なリガンドfMLPをシスチンにて架橋した二量体ペプチドの合成と生物活性評価を行なった。二量化ペプチドの合成は、対応する単量体ペプチドをジスルフィド結合で二量化する方法で行なった。単量体ペプチドはFmoc固相合成法にて合成した。2-クロロトリチル樹脂を用い、Fmocアミノ酸をHBTU-HOBt法にて活性化させ、樹脂上で縮合する事で得た。Cys残基間のジスルフィド結合の形成は一方のチオール基をNpysで活性化し、他方のチオール基と反応する方法で行なった。得られた化合物の純度及び構造はHPLC及びMALDI-TOFMSにて確認した。それらの化合物の生物活性は急性骨髄性白血病細胞HL-60における細胞内カルシウムイオン濃度変化として評価した。活性部位を2つ持つ二量化fMLPシリーズでは、鎖長が短くなるほど活性増強の傾向にある事が分かった。また、二量化fMLPの高い活性の原因が二価性であることを検討するため、fMLPの活性発現に必須のHCO基を、2つの活性コアから片方取り除いたペプチドを化学合成した。それらの生物活性を評価したところ、モノホルミル二量化fMLPは、相当する二量体に比べ著しい活性低下が認められた。この結果から、二量化fMLPの活性増強には、2つの薬理学的コアの存在が重要であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画であるヘテロ膜貫通ペプチドの生理機能を精査するため、ヘテロ膜貫通ペプチドを用い、アゴニストやアンタゴニストの生理活性評価は完了した、また、光架橋アミノ酸を含むペプチドの再度合成も完了した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、ヘテロ受容体タンパク質構築を詳細に検討する。現在まで申請者は、好中球受容体の7回の膜貫通部位のうち、N末端から4番目の膜貫通部位の配列を持つペプチドで前処理したヒト好中球が、アゴニストを単独で投与した場合に比べ高い生物活性を発現することを見いだした。これは膜貫通ペプチドが受容体タンパク質の膜貫通部と特異的に相互作用することで受容体を前活性化(プライミング)状態に変換させていると考えられている。今回はヘテロ膜貫通ペプチドの生理機能を精査する。ヘテロ膜貫通ペプチドを用い、アゴニストやアンタゴニストの生理活性を調べ、受容体の会合を調べる。優位に受容体と相互作用するペプチドでは、光架橋アミノ酸を含むペプチドを再度合成し、ペプチドが相互作用するタンパク質を特定する。膜タンパク質架橋の研究は種々報告があるが、ヘテロ二量体によるヘテロなタンパク質を架橋した例はほとんど無い。この場合は二種類の光架橋アミノ酸をそれぞれ別々にヘテロ膜貫通二量体の膜貫通領域に挿入し別々に光架橋を試みたい。また、受容体膜貫通ペプチドの開発も行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は予定通り計画を進めることができた。昨年度の変更により、次年度に使う研究費が生じた。次年度は、計画通り研究を遂行する予定である。
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