2012 Fiscal Year Research-status Report
抗酸化触媒作用をもつ脂肪族セレン化合物の分子設計と応用
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23550198
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
岩岡 道夫 東海大学, 理学部, 教授 (30221097)
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Keywords | セレン / 抗酸化剤 / アミノ酸 / タンパク質 / フォールディング / 触媒反応 / 不斉合成 |
Research Abstract |
有機セレン化合物は高い酸化還元反応性をもつことから,有機合成化学,薬学,生物化学など,幅広い分野での応用が期待されている。本研究では分子科学の立場から,有機セレン化合物のもつ特異な反応性を生かした新しい含セレン機能性有機分子を創製することを目的として、以下の3つの課題について検討している。 課題① 抗酸化酵素グルタチオンペルオキシダーゼ(GPx)の新規脂肪族モデルの分子設計. 課題② 抗脂質ペルオキシ化活性をもつ脂肪族セレン化合物の開発と分子機構の究明. 課題③ 新しい含セレン機能性有機分子の有機合成化学,生物分子科学研究への応用. 平成24年度に得られた研究成果は次の通りである。課題①において、平成23年度に確立した手法によりセレノシスティン(Sec)誘導体を合成し、これを用いてペプチド固相合成法によりGPxモデルとなり得るSecを含む各種セレノペプチドを収率よく得た。課題② では、平成23年度に合成に成功した水溶性脂肪族環状セレニドの脂肪酸誘導体について、その抗脂質ペルオキシ化活性の評価を行った。その結果、ヒドロキシ基をもつ5員環のセレニドDHSの誘導体がリン脂質ヒドロペルオキシドグルタチオンペルオキシダーゼ(PHGPx)の新しいモデル分子となることを明らかにした。また、DHSのヒドロキシ基をアミノ基で置換した環状セレニドMASの誘導体が高い抗酸化活性と酸化促進作用の2つの機能を併せ持つ可能性を見出した。課題③では、課題①で合成したα-メチルセレノシスティン(MeSec)誘導体を用いた新規な触媒的有機合成反応の開発を検討し、約20%の不斉収率を達成した。また,課題②で合成したDHSを酸化して得られたセレノキシド誘導体を用いて,リゾチームの酸化的フォールディング経路を明らかにすることにも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題①において、当初計画した4種類のSecを含む各種セレノペプチドの合成条件について検討した結果、収率の大幅な改善に成功し、これによってGPx活性中心のトライアッド構造が活性発現に重要であることを実験的に初めて証明することができた。課題② では、計画したDHSのヒドロキシ基をアミノ基で置換した新規環状セレニドの合成に成功するとともに、DHSのヒドロキシ基に脂肪酸をエステル結合によって導入したものについて抗脂質ペルオキシ化活性を測定したところ、長鎖アルキル基の効果によって高い抗酸化活性が発現することを見出した。反応機構を詳細に検討した結果、この化合物がPHGPxモデルとして作用していることを明らかにした。課題③では、不斉収率の向上に成功するとともに、リゾチームの酸化的フォールディング経路が温度によって変化することを初めて明らかにすることに成功した。新しい含セレン機能性有機分子の有機合成化学,生物分子科学研究への応用は順調に進んでいる。 以上の研究成果を含め、平成24年中に4報の学術論文を公表し、国際会議での発表を7件(うち招待講演2件)、国内討論会での特別講演1件などを行った。また、1件の解説記事を雑誌「化学」に執筆した。以上のように、研究成果は計画通りに着実に蓄積されている。
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Strategy for Future Research Activity |
課題①②③について,平成24年度と同様の検討を継続して行う。化合物の合成(課題①)では,これまでのFmoc法に加えてBoc法に対応するSec誘導体の合成を検討し、セレノペプチドの合成法としてのFmoc法とBoc法の比較を行う計画である。さらに、Secを含むセレノペプチドの合成手法をセレノメチオニン(Sem)に適用し,Semを含むセレノペプチドの固相合成法についても検討し、これら一連のペプチド分子のGPxモデルとしての機能を探究する。課題②では,ヒドロキシ基またはアミノ基を有する水溶性環状セレニドに長さの異なる長鎖アルキルを導入した誘導体を各種合成し、そのGPx活性と抗脂質ペルオキシ化活性の測定を継続して行う。課題③では、セレノシスティン誘導体を用いた触媒的不斉反応の更なる収率の向上を目指す。また、セレノキシドを用いたタンパク質のフォールディングの検討では、SS結合の数が多いタンパク質(具体的には、牛血清アルブミン)の酸化的フォールディング経路の解明に挑戦する。これらの研究を進めることによって、新しい含セレン機能性有機分子の有機合成化学,生物分子科学研究への応用を図る。さらに、平成24年度に引き続き、タンパク質の構造シミュレーションについての研究も展開していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、平成23年度および平成24年度と同様に、研究費の一部を薬品購入と実験器具類購入のために使用する予定である。また、国内学会及び国際会議(セレン・テルル国際化学会議7月、招待講演)で研究成果を発表する予定であり、そのための旅費と学会参加費用としても研究費を使用する。平成24年度に引き続き研究員を1名雇用して、タンパク質およびセレノペプチドの構造シミュレーション計算についても研究を進める予定である。 本年度は計画よりも消耗品の購入を節約できたため若干の繰越額が生じた。これについては次年度の消耗品購入に使用する予定である。
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Research Products
(28 results)